神経科学:脳の活動を解読して文章を綴る
Nature Communications
2022年11月9日
発話できない臨床試験参加者が、言葉を発さずに音声学的に単語を綴って、完全な文を書こうとする時の脳活動を解読するデバイスについて報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、発話のための無音制御型神経プロテーゼが、単語を綴る行為に基づいた方法で、文章を生成する可能性を浮き彫りにしている。
神経プロテーゼは、失われた神経系の機能を代替するデバイスであり、麻痺のために発話やタイピングができない人の意思伝達能力を回復させる可能性がある。しかし、無言で発話を試みることで意思伝達用の神経プロテーゼを制御できるかどうかは明らかになっていない。以前の研究では、発話できない臨床試験参加者が神経プロテーゼシステムを用いる実験で、最大50単語を解読できた。しかし、この神経プロテーゼシステムは、特定の語彙についてのみ有効であるばかりか、試験参加者は、大きな声で単語を読み上げようとしなければならないため、麻痺状態にある参加者にかなりの負担を強いた。
今回、Edward Changたちは、脳の活動を1文字に翻訳してリアルタイムで完全な文を綴ることができる神経プロテーゼを設計し、重度の声道麻痺と四肢麻痺のために意思伝達能力に障害を来した試験参加者に使用させて、この神経プロテーゼの有用性を実証した。この研究でChangたちは、フォネティックコードに関連する脳活動を解読するシステムを設計することで、過去の研究で用いた手法をさらに大規模な語彙に拡大適用した。このシステムの検証試験では、試験参加者が無言でフォネティックコードの発声を試みた時の脳活動の解読に成功し、1,152語の語彙から毎分29.4文字の速度で文章が生成され、文字の平均誤読率は6.13%だった。さらなる実験で、この手法は9,000語以上を含む大規模な語彙に一般化され、平均誤読率は8.23%となった。
以上の結果は、フォネティックコードを利用して単語を綴ることに基づいた方法によって文章を生成する無音制御型神経プロテーゼの可能性を浮き彫りにしている。より多くの試験参加者において、この手法の有用性を再現できることを示すためには、さらに研究を重ねる必要がある。
doi:10.1038/s41467-022-33611-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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