環境:米国西部でビーバーが作るダムが河川の水質を維持しているかもしれない
Nature Communications
2022年11月9日
ビーバーが作るダムは、気候によって引き起こされる極端水文事象と比較して、河川流量、窒素フラックスと酸素フラックスを制御することを通じて河川の水質に与える影響が大きいという可能性を示唆した論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、米国コロラド州の河道の研究に基づいており、ビーバーの生息域が拡大することが、水系の水質に対する気候変動の悪影響を軽減する上で役立つ可能性を示している。
極端水文事象(急速な融雪や豪雨など)は、主要水系の水質に影響を及ぼすことが知られている。気候変動性の増大は、他の人為的影響とともに、極端水文事象の変化をもたらしており、干ばつと洪水の両方が、より頻繁に、より大規模に起こるようになっている。さらに、アメリカ西部の気候は全般的に気温上昇と乾燥化が見られ、アメリカビーバーの生息域が拡大している。これらのビーバーのダム作り行動は、地域の水系の流量と水質に影響を与えることが知られている。
今回、Scott Fendorfたちは、米国コロラド州イースト川の山岳流域で、2018~2019年の低水位期と融雪による洪水期の両方において、気候によって誘発された極端水文事象の影響をモニタリングし、この流域にビーバーがダムを作る前と後を比較した。その結果、この流域の水文応答が、気候変動の影響を受けており、河川流量や炭素、栄養素、汚染物質の排出量が変化していることが判明し、その影響が、ビーバーが作るダムによって緩和されている可能性が示された。そして、Fendorfたちは、ビーバーが作るダムが、季節的な極端水文事象の10倍以上も河川の動水勾配を増加させることを明らかにした。これにより、季節的な極端水文事象だけの場合と比べて硝酸塩の除去量が50%近く増加し、酸素を使って呼吸をする水生生物にとっての水質が改善されている。
気候変動によって季節的な極端水文事象、降水量と気温のパターンが変化すると予測されるが、Fendorfたちは、ビーバーが作るダムの存在は、将来の気候条件下で予測される影響を緩和し、下流の水質を保全する上で役立つ可能性があるという見解を示している。
doi:10.1038/s41467-022-34022-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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