気候変動:2030年頃には東部太平洋の海面水温の変動性に変化が見られるかもしれない
Nature Communications
2022年11月16日
人為起源の気候変動に関連する東部太平洋の海面水温の変動性が強化され、2030年頃に検出できるようになるという予測を示した論文が、Nature Communicationsに掲載される。これは、従来の予測よりも最長で数十年早い。この研究知見は、東部太平洋における海面水温の変動の強化が早期に出現することに対して適切な政策と対応戦略を策定する際に有益な情報となる可能性がある。
太平洋における自然の気候変化は、主にエルニーニョ-南方振動(ENSO)に支配されている。ENSOは、大気と海洋の結合の一種であり、世界の気候と社会に対して重大な影響を広範囲に及ぼしている。ENSOは、高温相(エルニーニョ)と低温相(ラニーニャ)を交互に繰り返す。これまでの研究では、ENSO現象の特徴が、海面水温が比較的高い東部赤道太平洋と比較的低い中部赤道太平洋で異なっているという考えが示されている。しかし、ENSO振動の変動性が増大する海域とその発生時期の予測という点や人為起源の気候変動がENSO振動の変動性に及ぼす影響という点は、依然として明らかになっていない。
今回、Tao Geng、Wenju Caiたちは、1950年以降の約70年間のENSOデータを解析し、最新の気候モデルのいくつかを用いて、東部太平洋や中部太平洋でENSO振動の変動性の増大が検出可能になる時期を推定した。その結果、東部太平洋では2030年頃に気候変動に伴う海面水温の変動の強化が検出される可能性が高く、これまでの予測よりも40年早くなることが判明した。さらに、海面水温の変動というシグナルは、中部太平洋よりも東部太平洋で早く出現すると予測されており、その原因は、東部太平洋の海面水温上昇のペースが速いこととその結果としての降水量の増加率の上昇とされる。そのため、ENSO関連の緩和と適応の取り組みにおいては、温室効果による温暖化に対する東部太平洋のENSO現象と中部太平洋でのENSO現象の応答の多様性を考慮に入れなければならないと論文著者は結論付けている。
doi:10.1038/s41467-022-33930-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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