免疫学:分娩方法が乳児の腸内環境とワクチン接種への応答に影響するかもしれない
Nature Communications
2022年11月16日
出生時の分娩方法の種類(経膣分娩か帝王切開か)が、乳児の腸内マイクロバイオームの変化と特定の小児期ワクチンに対する応答性と関連していることを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の研究で得られた知見は、帝王切開より経膣分娩の方が、健康な乳児における通常の小児期ワクチン(2種)に対する特定の種類の抗体応答の増加に関連するマイクロバイオーム組成をもたらすことを示唆している。
小児期ワクチンは、小児期に関連する一定数の感染症に対する防御を付与することを目指している。これらのワクチンがどの程度相互作用して、免疫応答を誘導するのかは、乳児に生じる防御のレベルにとって重要だ。マイクロバイオームは、ワクチン接種に対する免疫応答において役割を担うことが知られている。しかし、生後早期の微生物への曝露とそれが腸内微生物相の組成とその後の小児期ワクチンへの応答に与える影響の関係については、まだ十分に解明されていない。
今回、Debby Bogaertたちは、経膣分娩で生まれた乳児と帝王切開で生まれた乳児(合計101人)を調べて、誕生から12か月間の腸内マイクロバイオームを評価し、その上で、呼吸器系病原体を標的とする2種類の通常の小児期ワクチン(肺炎球菌ワクチンと髄膜炎菌ワクチン)に対する抗体応答を生後12か月と18か月の時点で評価した。Bogaertたちは、経膣分娩による出産は、生後数か月間の腸内マイクロバイオームにおけるビフィズス菌と大腸菌の量の増加とこれら2種類のワクチンに対するIgG抗体応答の上昇と関連することを見出した。今回の研究で重要なのは、帝王切開ではなく、経膣分娩の場合に、マイクロバイオームが分娩方法と肺炎球菌ワクチンへの応答との関連を仲介したことを明らかにした点だ。
以上の知見からは、マイクロバイオームや小児期ワクチンに対する免疫系の応答性が、出生時の分娩方法によって異なるという可能性が示唆されている。ただし、抗体レベルの違いが免疫防御量とどのように対応するのかという点は、今回の研究では分かっていない。
doi:10.1038/s41467-022-34155-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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