Research Press Release

環境:海流を調べると熱帯低気圧の勢力が強くなっていることが分かった

Nature

2022年11月17日

熱帯低気圧の70%を占める弱い熱帯低気圧の強度が、海洋温暖化のため、過去30年間にわたって全ての海盆で上昇してきたことを報告する論文が、今週、Natureに掲載される。

熱帯低気圧は、上陸時に沿岸地域を壊滅させることがあるため、その仕組みを理解することは、その影響に備える上で重要だ。海面水温が上昇するにつれて熱帯低気圧が強化されると考えることは、理論モデルと数理モデルで一致しているが、この点についての人工衛星の観測による十分に正確な証拠がないために論争が起こっている。従来の人工衛星を利用して得られた証拠は、豪雨、雲、砕波、海水飛沫によって汚染されている可能性がある。

今回、Guihua Wangたちは、従来の方法を補完する新しい方法で熱帯低気圧の強度を定量化するために、独自の海流観測(「サーフェス・ドリフター」と呼ばれる海上浮遊装置による質の高い海流計測)を行った。熱帯低気圧と海流の間には密接な関係があり、米国海洋大気庁が配備したドリフターは、非常に正確な海流計測ができる。Wangたちの解析によって、熱帯暴風やカテゴリー1に分類される弱い熱帯低気圧が、地球温暖化の影響で1991年から2020年までの間に強化されたことが明らかになった。

以上の結果は、熱帯低気圧モデルによるシミュレーションと予測を評価するために使用できる基準となり、予測精度を高める上で役立つ。
 

doi:10.1038/s41586-022-05326-4

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度