量子物理学:量子プロセッサー上のホログラフィックワームホール
Nature
2022年12月1日
量子プロセッサー上でホログラフィックワームホールの量子「シミュレーション」が行われたことを初めて報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この実証は、GoogleのSycamoreプロセッサーを使って行われたもので、実験室内で量子重力を研究する可能性に向けた一歩と言える。
一般相対性理論は、高エネルギーの物理世界や物質密度の高い物理世界(例えば天体)を記述し、量子力学は、原子スケールと原子未満のスケールで物質を記述する。量子重力は、上述の2つの物理世界が関係する物体(例えばブラックホールの内部)を記述する物理学上の理論仮説だ。しかし、量子力学と一般相対性理論は、根本的に相いれないものであり、そのため量子重力理論については意見の一致が見られない。
ホログラフィック原理は、量子力学と一般相対性理論を調和させるために役立つかもしれない各種理論をつなぐ方法であり、相対性については、制限された物理系において量子物理学から生じたものと説明される。今回、Maria Spiropuluたちは、ホログラフィック原理に従って、ホログラフィックワームホールのシミュレーションを行う単純な系を設計した。ホログラフィックワームホールとは、適切に設計された量子系の特性が重力系で予想される特性と一致する場所のことだ。今回の量子シミュレーションは、9キュービット回路で構成される量子コンピューターを使って実行された。プロセッサー内をテレポートしたキュービットのダイナミクスは、通り抜け可能なワームホールを通り抜ける際に予想されるダイナミクスと同じだった。
これらの実験により、将来的に量子重力理論の検証に量子コンピューターを使用することの実現可能性が初めて実証された。
doi:10.1038/s41586-022-05424-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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