惑星科学:火星の活発なマントル・プリューム
Nature Astronomy
2022年12月6日
火星の北部平原の下に、およそ4000キロメートルの直径の活発なマントルプリュームが存在し、これが地殻を押し上げ、高温のマグマを表面に輸送している可能性があることを報告する論文が、Nature Astronomyに掲載される。このマントルプリュームは、エリシウム平原に位置しており、この領域の火山や地震の活動を説明できるかもしれない。
火星は、特に地球と比較して、現在のテクトニクスや火山噴火の証拠がないため、一般に地質学的に不活発な世界と考えられてきた。しかし最近、2018年から火星で活動中のNASAの探査機インサイトが、活動レベルは低いが持続する地震活動を検出し、これはケルベロス・フォッサと呼ばれる最近形成された系に由来している可能性がある。ケルベロス・フォッサは、5万3000年前に火星の最も新しい火山活動が生じた場所でもある。
Adrien BroquetとJeffrey Andrews-Hannaは今回、インサイトとケルベロス・フォッサが位置するエリジウム平原の地形、重力、地質を分析した。彼らは、地球物理学的モデルを用いて、この地域全体がその周辺よりも温度が95〜285ケルビン高い、高温物質のマントル・プリュームの上に位置している証拠を見いだした。このプリュームの中心がまさにケルベロス・フォッサに位置している。地球と同様に、活発なプリュームの存在は、インサイトで検出された火星の地震を含む局所的で持続的な地質活動を引き起こし、ケルベロス・フォッサの下の地殻がゆっくりと開いていく原因となっている。
これらの知見から、火星は、内部太陽系において地球、金星に次いで、現在活発なマントル・プリュームを有する第3の天体である可能性が示唆される。
doi:10.1038/s41550-022-01836-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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