グリーンランド氷流は数千年前に急激に停止した
Nature Geoscience
2022年12月6日
グリーンランド氷床北東部に広がる高速で動く氷の流れは、数千年前に停止し、突然再構成されたと報告する論文が、Nature Geoscienceに掲載される。この発見は、グリーンランド氷床の将来の気候シナリオにおける安定性の理解を助ける可能性がある。
グリーンランド内陸で降雪により蓄積された氷は一般的には海岸へ向かって動くが、一部は氷流と呼ばれる高速で動く流路により流れる。直接的な表面での融解と共に、これは氷床から質量が失われる主要な過程の1つである。北東グリーンランド氷流は、現在のグリーンランド氷床の大きな部分から氷が流出する代表的な例である。氷流は、グリーンランドなどの氷床の全体的な振る舞いを理解する上で重要であるにもかかわらず、それがなぜ起きてどの程度の時間にわたって安定なのかは正確にはよく分かっていなかった。
Steven Frankeたちは今回、レーダーのデータを解析して北東グリーンランド氷床深部に埋もれた層を追跡し、これを使ってこの地域における過去の氷流の状態を再構築した。その結果、現在の北東グリーンランド氷流の北に、速い氷の流れがあったことを示唆する一連の明瞭な褶曲があることが見いだされた。褶曲の方向や変形の仕方から、少なくとも2つの氷流が存在し、現在は活動していないことが示唆された。これらの特徴の正確な年代を特定することは困難であるが、著者らは、少なくとも完新世初期(およそ1万1500年前)にかけて活動しており、現在の氷流よりもさらに北の地域の氷を流出させていたことを示唆している。
氷流の位置が変化した正確な理由は分からないが、著者たちは、グリーンランド氷流は地質学的条件の変化に急速に対応することができ、現在進んでいる温暖化によって、将来的に同様の再構成が起こり、海水準上昇に影響を及ぼす可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41561-022-01082-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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