遺伝学:飲酒と喫煙に関連する遺伝的バリアントが大規模なゲノムワイド関連解析によって特定された
Nature
2022年12月8日
約340万人を対象とした多人種集団でのゲノムワイド関連解析(GWAS)が実施され、喫煙行動や飲酒行動の遺伝的関連性が4000ほど特定された。この知見は、これらの複雑な行動に対する遺伝的影響の可能性の解明を進めた。今回の研究について報告する論文が、今週、Natureに掲載される。
喫煙や飲酒は、さまざまな疾患や障害の主要なリスク因子で、環境要因(文化的背景や公衆衛生政策など)の影響を受けることもあるが、遺伝的特徴もタバコやアルコールの使用に寄与していることを示す強力な証拠がある。従来のゲノムワイド関連解析では、多くの人々の遺伝データを比較して喫煙や飲酒に関連する可能性のある遺伝子が特定されたが、主にヨーロッパ系の人々に焦点を合わせていた。一方、それ以外の人種集団における飲酒行動や喫煙行動に対する遺伝的寄与は、ほとんど解明されていなかった。
今回、Scott Vrieze、Dajiang Liuたちは、4つの人種集団(アフリカ系、アメリカ系、東アジア系、ヨーロッパ系)の約340万人を含む60のコホートのゲノムワイド関連解析データをまとめ、解析を行った。研究コホートの20%以上がヨーロッパ系以外の人々によって構成されていた。今回の研究で、喫煙開始年齢や1週間に摂取するアルコール飲料の数などの喫煙行動や飲酒行動に関連する約4000の遺伝的バリアントが特定された。著者は、これらのバリアントの大部分が、異なる人種集団で一貫した影響を示すことを明らかにした。これに対して、ヨーロッパ人のデータを使ってトレーニングされた多遺伝子スコア(複数の遺伝的バリアントの集合的影響に基づいた遺伝的関連性の評価基準)は、ヨーロッパ系以外の人種集団に適用した場合の予測能力が、ヨーロッパ系の人種集団に適用した場合よりも低かった。この知見は、複数の人種集団に適用できる多遺伝子スコアを開発することが未解決の課題であることを示唆している。
今回の研究で得られた知見は、喫煙行動や飲酒行動に関連する遺伝的要因の解明を進め、このような研究におけるサンプルサイズを拡大することと多様な人種集団を検討することの重要性を強調している。
doi:10.1038/s41586-022-05477-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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