古生物学:ディプロドクス科恐竜は超音速で尻尾を振り回していなかった
Scientific Reports
2022年12月9日
ディプロドクス科恐竜(長い首と尾を持つ大型草食恐竜)の尾をモデル化して調べたところ、その尾を牛追い鞭のように動かす際の最高速度が秒速33メートル(時速100キロメートル以上)だった可能性が明らかになったと報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。しかし、この知見は、ディプロドクス科恐竜の尾の先端に付いていたという仮説上の構造(牛追い鞭の先端の房に似た構造)が音速(秒速340メートル)よりも速く動いて、小さな衝撃波を発生させたかもしれないという考えを示した以前の結果と矛盾している。
今回、Simone Contiたちは、ディプロドクス科恐竜の化石標本(5点)をもとに作成したモデルを用いて、ディプロドクス科恐竜の尾の動きのシミュレーションを行った。この尾のモデルは、長さが12メートル以上、重さが1446キログラムで、椎骨を模した82本の円柱体で構成され、動かすことのできない寛骨の付け根に取り付けられた。尾の付け根が弧を描くように動かした時には、鞭のような動きが生じ、最高速度が秒速33メートルに達した。これは、標準大気での音速の10分の1に満たず、遅すぎて衝撃波は発生しない。
Contiたちは、この尾部のモデルが衝撃波を発生させるために十分な速度で動く際に受ける応力に耐えられるかどうかを検証した。その結果、細い鞭のような尾は、秒速340メートルという最高速度で動くと折れてしまうことが分かった。次にContiたちは、尾部モデルの先端に長さ1メートルの3種類の仮説上の構造(牛追い鞭の先端部を模したもの)を付加することで、破断せずに音速で動くかどうかを評価した。第1の構造は、皮膚とケラチンでできた3つの節からなり、第2の構造は、撚り合わされたケラチンフィラメントからなり、第3の構造は、軟組織でできた殻竿のような構造だった。いずれの構造の場合も、尾が秒速340メートルで動いた時には、尾が応力に耐えられず折れてしまった。
こうした知見を合わせると、ディプロドクス科恐竜の尾が、小さな衝撃波を起こすほどの速さで動いていなかった可能性が示唆されている。しかし、Contiたちは、ディプロドクス科恐竜が他の同種個体との戦闘の際に防御武器として使えるほど十分に速く尾を動かすことができたのではないかと推測している。
doi:10.1038/s41598-022-21633-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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