材料:低コストで持続可能性の高い酸化プロピレン製造法
Nature Communications
2022年12月14日
プロパンと酸素を使用して、これまでより高い持続可能性と経済性で、酸化プロピレン(塗料、靴、化粧品などのさまざまな一般消費者向け製品によく用いられる物質)を直接製造する方法を記述した論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の知見は、一般消費者向け製品市場の一部で、これまでより環境に優しい製造手法への移行を後押しする可能性がある。
多様な一般消費者向け製品(塗料やコーティング剤、接着剤、家具用クッション、靴、化粧品など)に使用される材料であるポリウレタンポリマーやプロピレングリコールポリマーを工業規模で製造する際の重要な出発物質の1つが、酸化プロピレンだ。しかし、現在の酸化プロピレンの製造は、高コストで環境への配慮を欠いた一連の工程によって実施されている。
今回、Annette Trunschkeたちは、触媒の合成だけでなく、温度やガス混合物の組成などの反応条件を最適化することで、プロパンと酸素の混合物から酸化プロピレンを直接合成できることを報告している。今回の研究では、この手法を多様な低コストの触媒材料(石英ウールやシリカなど)に適用できる可能性が判明し、この手法によってプロピレンと酸化プロピレンの混合物が得られ、現在の工業規模での製造方法と比較してCO2排出量が削減されることが明らかになった。プロパンの一般的な過酸化生成物であるCO2も温室効果ガスの一種であり、酸化プロピレンの製造コストを上昇させる。今回の研究で、酸化プロピレンの合成にとっての重要な原理は、触媒の構造ではなく、出発物質の混合物を適切に調製して触媒との相互作用を最小限に抑え、余計な化学的副反応や不必要な化学的副反応を回避することであることが明らかになった。
また、Trunschkeたちは、この技術的手法の予備的な経済分析を行い、この手法に拡張性があり、原材料価格によっては、現在の工業技術に対する競争力を確実に有することを明らかにした。さらに、今回の方法には、一般消費者向け製品の製造コストを削減し、持続可能性を高めた製造経路を創出するという追加的な利点もある。
doi:10.1038/s41467-022-34967-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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