【動物行動】野生のチンパンジーの文化的偏見
Scientific Reports
2011年11月4日
新たな課題に直面した野生のチンパンジーが、その課題の遂行に用いる道具を選ぶとき、その選択に過去の経験が影響している可能性があることが明らかになった。捕獲され飼育されている類人猿において過去に獲得した採餌方法を用いる傾向が見られるとした研究がすでに発表されているが、この結果が、今回の新知見によって裏づけられた。詳細を報告する論文が、今週、Scientific Reportsに掲載される。 T Gruberたちは、ウガンダの2つの群集(SonsoとKanyawara)の出身である野生のチンパンジーが、葉付きの木の枝を一部加工したものを使って長方形の穴から液状のハチミツを取り出すという新しい課題に取り組む際に、それぞれの群集に特有の方法を用いるかどうかを調べた。木の枝を使って食料を得ることのあるKanyawaraのチンパンジーは、ハチミツに棒を突っ込み、棒についたハチミツを取り出す傾向が見られた。一方、木の枝を使った採餌行動を観察されたことがないSonsoのチンパンジーは、この葉付きの木の枝の葉の部分が最も重要だと考え、一部のチンパンジーは、葉のスポンジを作った。しかし、枝の部分を使ってハチミツを得た者はいなかった。 次に、Gruberたちは、Kanyawaraのチンパンジーが好んで行う採餌方法をSonsoのチンパンジーに見せた。すなわち、長方形の穴に突き刺さった葉付きの木の枝を見せて、これを穴から直接抜き取らせようとしたのだ。Sonsoのチンパンジーの一部は、木の枝を抜き取り、あるいは木の枝に触ったが、ハチミツを得るための道具として利用することはなかった。 野生のチンパンジーが用いる学習機構を理解するにはさらなる研究が必要だが、Gruberたちは、今回の結果を文化的偏見の観点から解釈できる可能性があると考えている。すなわち、それぞれの群集に属するチンパンジーが、与えられた環境をどう知覚し、評価するのかは、文化的偏見によって制約されているというのだ。
doi:10.1038/srep00128
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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