宇宙での健康:もっと健康的な宇宙飛行食にして宇宙飛行士の健康とパフォーマンスを高める
Scientific Reports
2022年12月16日
宇宙飛行中の宇宙飛行士の食事として、標準的な宇宙飛行食より多くの種類と量の果物、野菜、魚を含む強化食を提供することが選択肢になるとした研究報告が、Scientific Reportsで発表される。今回の研究は、地球上に設置された宇宙飛行環境のシミュレーションチェンバーを使って、16人を対象として実施され、これによって得られた知見は、宇宙飛行士の健康と宇宙飛行における食料資源の優先順位に関する決定に対して重要な意味を持つ可能性がある。
長期間の宇宙飛行は、飛行士の健康に影響を及ぼすことが知られており、宇宙船のサイズと使用電力量の制約があるために宇宙空間に持ち込めるものが制限されている。宇宙飛行士の食料は、宇宙飛行中の健康への悪影響の一部を軽減できる可能性があるが、その一方で、質量、体積、保存期間、保管要件といった制約が加わる可能性もある。
今回、Grace Douglasたちは、2種類の食事が16人(男性10人、女性6人)の参加者に及ぼす影響の違いを調べた。宇宙船に長期間閉じ込められるという宇宙飛行環境のシミュレーションチェンバーが地上に設置され、これらの条件下でさまざまな食材を保存できるという実用性が付加された。今回の研究では、この実験施設で45日間のミッションが4回実施され、4人ずつ参加した。参加者は、強化食と標準食のいずれかを摂取した。強化食は、果物と野菜の提供回数と種類が多く、魚類とオメガ3脂肪酸の供給源が多く含まれていた。現在、国際宇宙ステーションでは標準的な宇宙飛行食が提供されており、この標準食がほとんどの要件を満たしているが、Douglasたちは、より多くの果物や野菜とオメガ3脂肪酸の供給源を提供するという選択肢を提案している。
強化食では、果物と野菜の提供回数が1日6回以上、魚類の提供回数が1週間2~3回で、その他にも健康的な食品が提供された。全ての食品は、常温保存が可能で、現在の宇宙ミッションでの室温長期保存という条件に適合している。実際の宇宙飛行の状況のシミュレーションを行うため、食料は各ミッションの開始前に実験チャンバー内に保管された。参加者は、唾液、尿、血液、糞便の検体を提供し、ミッション全体を通して認知機能評価タスクを実行した。強化食では、果物と野菜の提供回数が1日6回以上、魚類の提供回数が1週間2~3回で、その他にも健康的な食品が提供された。全ての食品は、常温保存が可能で、現在の宇宙ミッションでの室温長期保存という条件に適合している。実際の宇宙飛行の状況のシミュレーションを行うため、食料は各ミッションの開始前に実験チャンバー内に保管された。参加者は、唾液、尿、血液、糞便の検体を提供し、ミッション全体を通して認知機能評価タスクを実行した。
強化食を摂取した参加者は、標準食を摂取した参加者と比べて、コレステロール値が低く、コルチゾール値が低く(ストレスが低いことが示唆され)、認知速度、正確性、注意力が高く、マイクロバイオームが安定していた。
Douglasたちは、宇宙飛行時の強化食は、摂取者の健康とパフォーマンスに有意な利益をもたらし、短期間の宇宙ミッションであっても宇宙飛行士に有益となる可能性があると結論付けている。宇宙飛行でこれまでより健康的な食事を取ることを評価するためにさらなる研究が必要だが、以上の新知見は、将来の宇宙探査ミッションにおける食料資源の優先順位に関する指針として役立つ可能性がある。
doi:10.1038/s41598-022-21927-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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