神経科学:薬物と食物への渇望の神経マーカーが同定された
Nature Neuroscience
2022年12月20日
薬物や食物への渇望の強度を予測するために使用できる脳神経画像上の特徴について報告した論文が、Nature Neuroscienceに掲載される。
薬物使用への渇望や食物への渇望は、物質使用や過食を駆動する要因と考えられている。薬物や食物に関連した刺激によって誘発される渇望は、薬物使用や薬物依存の再発、不健康な食事、体重増加の予測に役立つ可能性がある。しかし、人間の渇望の神経基盤は、十分に解明されていない。
今回、Leonie Koban、Tor Wager、Hedy Koberの3人は、ニコチン、アルコール、コカインの使用者とそれに対応する対照において、薬物や食物への渇望の強度を予測する神経マーカー(生物学的指標)を特定した。3つの機能的磁気共鳴画像研究が実施され、99人の参加者に薬物の画像や非常に味の良い食物(例えば、パンケーキの山)の画像を見せて、1つの実験条件では、画像上の薬物や食物を摂取した場合の直接的なプラスの結果を考えることを指示し、別の実験条件では、繰り返し摂取した場合のマイナスの結果を考えるように指示した。また、今回の研究では、参加者の画像上の薬物や食物への渇望の強度が評価された。次に、こうして得られた脳神経画像データに機械学習を適用してNeurobiological Craving Signature(NCS)が構築された。NCSには、いくつかの脳領域が含まれており、その領域の活動が、渇望レベルの高低を予測するために利用できる可能性が判明した。
NCSは、薬物への渇望と食物への渇望の強度を非常に正確に予測できた。さらに、著者たちは、薬物と食物の刺激に対する参加者のNCSの応答記録から薬物使用者と非使用者を特定できた。また、食物の画像に対するNCSの応答から薬物への渇望の強度を予測でき、その逆も可能なことも明らかになった。この結果は、食物と薬物への渇望に共通の神経経路が関係していることを示唆している可能性がある。
著者たちは、今回の研究によってNCSが同定されたことで、渇望の治療と現在の渇望の改善のための臨床的介入を開発する際の標的候補が得られたと結論付けている。
doi:10.1038/s41593-022-01228-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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