進化学:獣脚類恐竜の足指先の裏
Nature Communications
2022年12月21日
空を飛べる初期獣脚類の趾球(足の指先の裏の柔らかい膨らみの部分)と足の鱗の形状に関する新しいデータを示した論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。獣脚類は、3本指の恐竜の分類群で、ティラノサウルス・レックス、ヴェロキラプトル、鳥類が含まれる。今回の知見は、現生鳥類に近縁の絶滅種の把持能力(物をつかむ能力)や狩猟能力などの行動や生活様式の理解を深めるために役立つ可能性がある。
現生鳥類の足の形状と大きさは、跳躍、止まり木への着地、浅い水中を歩いて渡ること、遊泳、木登り、把持などの能力に対応することが知られている。現生鳥類の鉤爪、骨、関節の形状は、空を飛べる初期獣脚類の化石が有する同じ特徴の機能を推測するために利用される。足の軟組織(趾球や鱗など)の機能は、現生鳥類に関して解明されているが、化石記録にあまり保存されていないため、絶滅種における役割を推測することは困難になっている。
今回、Michael Pittmanたちは、現生鳥類の近縁種(8種)に関連する化石標本(12点)の足の軟組織の詳細を調べて、これらのデータを鉤爪や骨の化石の測定値と合わせた。この8種には、鳥類の近縁種であるミクロラプトルだけでなく、小型(カラス並みの体長)の初期鳥類(アンキオルニス、コンフウシウソルニスなど)が含まれている。Pittmanたちは、似たような足の適応(例えば、ミクロラプトルに見られる十分に発達し凸型に膨らんだ趾球)を持つ化石種が、現代の猛禽類(タカなど)と同様に獲物を狩るために足を使っていたという見解を示している。一方、平たい趾球を持つ化石種(例えばアンキオルニス)は、むしろ地上中心の生活様式に足を使っており、別の化石種は、現代のオウム類で観察されているように食物を操るためにも足を使っていた可能性がある。ただし、研究対象の化石の中には、現生鳥類の例に対応しないものがあり、サペオルニスのような絶滅種は、現在の現生鳥類では確認できない行動や生活様式を示していた可能性のあることが示唆されている。
今回の知見は、空を飛べる獣脚類の飛行能力が発達したため、その行動や生活様式に関連する適応に予想外の多様性が生じたことだけでなく、鳥類以外の飛行動物が捕食性鳥類の現生種に似た複雑な適応を示していたことを示唆している。
doi:10.1038/s41467-022-35039-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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