地球科学:森林が出現する前に植物が大気中CO2濃度を引き下げた可能性がある
Nature Communications
2022年12月21日
前期デボン紀と中期デボン紀(4億1000万年前から3億8000万年前まで)の大気中CO2濃度は、これまで考えられていたよりもはるかに低かったという可能性が浮上した。この新たな知見は、最も初期の維管束植物が、森林の出現よりずっと前の時代に大気中CO2濃度を大幅に低下させたことを示唆している。こうした初期のCO2濃度の低下は、その時期の著しい地球寒冷化と氷河作用につながった可能性がある。これらの知見について報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。
これまでの研究では、約3億8500万年前の森林の出現が、大気中CO2濃度の低下とそれに関連した全球的な気候寒冷化と結び付けられてきた。深根性の樹種(深く根を張る樹種)の出現は、大陸の風化を加速し、海洋の炭素隔離につながったと考えられていた。しかし、森林の出現から数百万年さかのぼった頃に大気中CO2濃度がかなり低かったという可能性が、地球化学的証拠から示唆されている。炭素循環の生物学的部分の意義については論争があり、こうした過程のモデル化には大きな不確かさが残っている。
今回、Tais Dahlたちは、ヒカゲノカズラ類の現生の子孫種、植物化石と地球化学的データの解析を行って、4億1000万年前から3億8000万年前までの大気中CO2濃度が、現在のレベルと比べて、およそ1.5倍とそれほど高くはなかったことを明らかにした。この点について、以前の研究では10倍と推定されていた。Dahlたちは、古気候と地球システムのモデル化を行って、最も初期の陸上植物による大気中CO2濃度の上昇とそれと同時に起こった大気の酸素化が、気候の著しい寒冷化と部分氷河作用をもたらすために十分であり、地質学的証拠と一致することを明らかにした。
Dahlたちは、深根性の樹種の出現がCO2の除去を大幅に増強したわけではなく、それまでの浅根性の生態系(根の浅い生態系)が、森林の出現のはるか以前に、急激な大気酸素化と気候の寒冷化を同時に引き起こしていたと結論付けている。
doi:10.1038/s41467-022-35085-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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