考古学:陶器が明らかにする古代ヨーロッパの狩猟採集民どうしのつながり
Nature Human Behaviour
2022年12月23日
陶器の作り方や使い方に関する知識は、農業が普及する以前から、ヨーロッパの狩猟採集民の集団間で、親族関係によって駆動される地域間のコミュニケーションネットワークによって共有されていたことを報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。陶器内の残渣を分析して得られた今回の知見は、陶器の伝統が中央アジアやシベリア西部に起源を有し、ヨーロッパ大陸全域の狩猟採集民社会に取り入れられたことを示唆している。
ヨーロッパ全体への農業の普及についてはこれまでの研究で調べられていたが、完新世初期、約1万2000年前にこの大陸に住んでいた狩猟採集民社会については不明な点が多かった。ヨーロッパの狩猟採集民社会は狩猟、採集、漁労に依存しており、初期の農耕社会と比較して、残された考古学上の記録は比較的少ない。
Rowan McLaughlinらは今回、東ヨーロッパおよびロシアの156カ所の狩猟採集民遺跡から得られた1226個の土器の遺物を分析した。研究チームは、放射性炭素年代測定、土器の形状や装飾に関するデータ、容器内に残された有機物残渣の解析を組み合わせた。その結果、陶器の普及は紀元前5900年以降、西方へと比較的進み、3000キロメートル進むのに300~400年間しか要さなかったことが示唆された(すなわち1世代に最長250キロメートル)。陶器の形状および装飾に関する分析から、陶器が文化伝達の過程を経て広がったことが示唆され、陶器の特性と使われ方の間に見られる相関は、狩猟採集民の世代を重ねて伝えられる社会的な伝統を反映している可能性があることが分かった。さらに研究チームは、陶器がさまざまな食べものの調理に使われていたことの証拠を見いだし、陶器の採用が、特定の経済的または環境的な圧力によって駆動されたものではないことを示唆している。
著者らは、陶器から得られる証拠は、考古学的な遺物の残存期間のばらつきに左右されると述べている。そして著者らは、狩猟採集民集団の相互に関連した性質についての理解を深めるためには、さらなる研究が必要だと示唆している。
doi:10.1038/s41562-022-01491-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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