気候変動:アフリカ南部に存在する水の不平等が都市部の渇水によって深刻化する
Nature Climate Change
2022年12月23日
気候変動に起因する渇水によって、アフリカ南部の都市部に存在する水の不平等がさらに深刻化するという予測を示した論文が、Nature Climate Changeに掲載される。この研究知見は、モザンビークのマプトにおける将来の渇水のシナリオ分析に基づいている。
世界のいくつかの地域(ブラジル、米国カリフォルニア州、中国、スペイン、アフリカ南部など)では、人為起源の気候変動によって渇水が深刻化しており、将来的に前例のない渇水が発生する危険にさらされている。グローバル・サウス(南の発展途上国)の都市部は、急成長したために水問題のリスクが高まっている。こうした都市部で繰り返される水の危機は、気候変動だけでなく、それぞれの社会における水管理政策と水不足への対応も原因になっている。
モザンビークの首都マプトでは、一部の社会集団が受けている渇水の被害が、他の集団よりも著しく大きい。今回、Maria Ruscaたちは、起こり得る渇水の影響に関する社会環境シナリオを作成した。今回の研究は、2016~2018年にマプトで発生した渇水とケープタウン(南アフリカ共和国)でそれまでに起こったことのなかった大規模な渇水(2015~2017年)に関する知見と世界中の都市部における渇水への社会的対応、過去の気候データと将来の気候予測をともに考慮に入れて実施された。
その結果作成されたシナリオによれば、今後、マプトで渇水が起こった時には、水の配給措置が実施され、それまでの水の不平等が深刻化することが予想されている。つまり、慢性的に水が不足している世帯の方が大きな影響を受けるという偏った結果になる可能性が高いのだ。この他にも配給以外に水を入手する方法を探すために女性が過重な負担を負うこと、飲料水が媒介する疾患のリスクや食料不足といった影響も考えられる。
Ruscaたちは、渇水への対応において社会全体の不平等を考慮に入れないと、渇水の徴候だけに取り組んで、不平等の根本にある社会的原因や構造的原因を放置してしまうリスクが生じ、その結果として、持続可能性のない不当な水の消費と水の管理が永続すると主張している。
doi:10.1038/s41558-022-01546-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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