生物多様性:マダガスカルで種の絶滅が起これば生物多様性が数百万年間脅かされる
Nature Communications
2023年1月10日
マダガスカルでは、絶滅危惧種の動物が絶滅すると、国内の生物多様性が人類到達前のレベルに回復するまでに数百万年かかる可能性があるとした論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、保全活動を早急に実施して、生物多様性の減少が長期間続くことを避ける必要があることを示唆している。
マダガスカルには、ユニークな動物種(ワオキツネザル、フォッサ、世界最小のカメレオンなど)が生息しているが、その多くは、人間活動の影響(例えば、森林破壊、狩猟、気候変動)のために絶滅の危機に瀕している。進化と他の地域からの新しい種の到来は、最終的にこうした絶滅を補うかもしれないが、そのために非常に長い時間がかかると考えられる。
今回Nathan Michielsenたちは、人間活動によるマダガスカルの動物相の破壊の程度を定量化し、今後の行方を予測することを目指して、現生哺乳類と最近絶滅した哺乳類(合計249種)が包括されたデータセットを構築した。その中には、人類が初めてマダガスカル島に到達した直後に姿を消した巨大なキツネザルと小型のカバの複数種が含まれている。Michielsenたちは、これらのデータをこれらの動物種の進化史や長期間にわたる地理的分布の統計モデルと合わせて、マダガスカル国内で現在の絶滅の危機が緩和されなければ、人類到達後に姿を消した動物種を回復するために300万年を要すると推定し、その上で、現在の絶滅危惧種が姿を消した場合には、回復までに2000万年以上を要すると推定した。また、Michielsenたちは、空を飛ばない哺乳類よりも容易にマダガスカル島に定着できるコウモリ種でさえ、回復には約300万年かかる可能性があるという見解を示している。また、絶滅の危機に瀕しているマダガスカルの哺乳類種の数が、過去十年間で劇的に増加し、2010年に56種だったものが、2021年には128種に達していたことも分かった。
Michielsenたちは、マダガスカルでの保全活動が間に合わないと、生物多様性に対する悪影響が数百万年も続く可能性があると警告し、地域住民の社会経済的改善策を保全プログラムに組み込んで、残された自然生息地における森林減少を抑制し、零細な資源開発や商業的資源開発(硬材になる広葉樹の伐採や肉取引のための野生動物の狩猟)を制限すべきだと提案している。
doi:10.1038/s41467-022-35215-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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