Research Press Release

保全:狩猟対象のライオンの最低年齢を引き上げてトロフィーハンティングの持続可能性を高める

Scientific Reports

2023年1月13日

ライオンのトロフィーハンティングに関するモデル化研究が実施され、プロの猟師が狩猟対象の年齢を正しく判断できない場合を考慮して雄ライオンの最低年齢の閾値を8歳に引き上げると、トロフィーハンティングの持続可能性が高まるかもしれないことが示唆された。この研究について報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。

トロフィーハンティングとは、主に娯楽観光とトロフィー(狩猟記念品としての獲物の体の一部)の持ち帰りを目的とした狩猟で、アフリカでは保全戦略として広く行われているが、その効用については議論がある。トロフィーハンティングの対象となる雄ライオンの最低年齢の閾値は通常6歳だが、以前の研究で、4歳から7歳のライオンは実年齢より高齢に推定されることが多いことが示唆された。また、ライオンは、密猟や家畜所有者との争いに巻き込まれる危険にもさらされている。

今回、Andrew Loveridgeたちは、ジンバブエのワンゲ国立公園のライオンに関する20年間の研究データを用いて、40の群れを形成する合計500頭のライオン集団のシミュレーションを実施し、密猟、人間との争い、トロフィーハンティングのそれぞれの影響をさまざまな年齢の閾値を用いてモデル化した。その結果、トロフィーハンティングの対象となる個体の若齢化、密猟や人間との争いの増加が、深刻な個体数減少につながるが、狩猟が許されるライオンの年齢を引き上げれば、トロフィーハンティングが持続可能になることが明らかになった。

人間との争いが少なく(月間死亡率が0.4%)、狩猟回数が多い(年間18頭のライオンという割り当て)という条件下では、安定した個体数を維持するために最低年齢の閾値を少なくとも7歳または8歳に設定する必要があり、8歳とすることでトロフィーハンティングが最も持続可能なものとなった。こうした結果は、猟師によるライオンの年齢推定の誤差をシミュレーションに組み込んだ場合でも再現された。人間との争いが存在し、狩猟対象の年齢の閾値を6歳以上としたシミュレーションでは、ライオンの個体数が、45年間に30%超の減少を示した。密猟や人間との争いの発生レベルが中程度(月間死亡率は0.8%)で狩猟対象の最低年齢の閾値を5歳以上としたシミュレーションでは、ライオンは、個体数の減少を経て、絶滅した。

Loveridgeたちは、トロフィーハンティングの対象を今よりも高齢の雄ライオンに限定すべきであり、密猟や家畜所有者との争いの影響を受ける大型肉食動物集団の狩猟割り当てを設定する際には慎重な対応が必要だと結論付けている。

doi:10.1038/s41598-022-25020-9

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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