グリーンランド氷床の気温が過去1000年間よりも高くなっている
Nature
2023年1月19日
西暦1100年から2011年までのグリーンランド中北部の気温を再構築する研究が行われ、グリーンランド氷床の最近の気温が、過去1000年間で最も高くなっていることが示唆された。今回の研究で、2001年から2011年までのグリーンランド氷床の平均気温が、20世紀の平均気温より約1.5℃高いことが判明した。この結果を報告する論文が、Natureに掲載される。
グリーンランド氷床は、その大きさ、雲放射効果、淡水の貯留によって、全球の気候において重要な役割を担っている。グリーンランド氷床の縁辺部に点在する気象観測所による観測で、この縁辺部の気温が上昇していることが示されたが、グリーンランド氷床の中央部における地球温暖化の影響については、長期的な観測がなされていないために我々の理解が限られている。この地域で唯一の複数地点の氷床コア記録は、1995年に終了した氷床コアプロジェクトNorth Greenland Traverse(NGT)によって得られた。
今回、Maria Hörholdたちは、西暦1100年から2011年までのグリーンランド中北部の気温を再構築するために、NGTで分析された地点のうちの5地点で氷床コアを再掘削した。Hörholdたちは、グリーンランド中北部の最近の気温が過去1000年間よりも高いという見解を示している。今回の研究で、2001~2011年について再構築された気温の平均値が、1961年から1990年までの平均気温より1.7℃高く、20世紀全体の平均気温より1.5℃高かったことが判明した。こうした気温の傾向について、Hörholdたちは、人為起源の気候変動の結果として18世紀以降に表面化した長期的な温暖化傾向が自然変動と重なり合って生じたという考えを示している。
Hörholdたちは、この温暖化に伴って氷床の融解水の流出が増加していることを指摘し、このことが、人為起源の温暖化がグリーンランド中北部に及ぼす影響を実証しており、その結果としてグリーンランド氷床から氷が失われる速度が加速する可能性があると述べている。
doi:10.1038/s41586-022-05517-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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