生態学:今後の極端な高温によって陸生動物が脅かされる
Nature
2023年1月19日
将来の世界の気温に関する現在の予測に基づいて2099年に全ての陸生脊椎動物の40%超が極端な高温現象に見舞われる可能性があることを明らかにした論文がNatureに掲載される。世界中の多くの生物種の将来にとって、高温状態への長時間の曝露は危険なことなのかもしれない。
極端な高温現象は、気温が過去の閾値を大きく上回る期間のことであり、過去の記録と比べて、発生頻度が高くなっており、人間の活動を原因とする気候変動によって深刻化している。気温が極端に高い期間が反復的に出現すると、野生生物が影響を受け、心理的ストレスの増加、生殖生産量の減少、個体群サイズの縮小にも関連し、そのため、このような気温の急上昇が続くことは、将来の生物多様性に対する重大な脅威と考えられる。気候変動が野生生物に及ぼす影響を評価する以前の研究では、日々の熱ストレスの短期的な動態や、高温そのものではなく気温の変動によって引き起こされる被害が評価されていなかった。
今回、Gopal Muraliたちは、1950年から2099年までの極端な高温現象の頻度、継続期間と強度の予測データを用いて、さまざまな温室効果ガス排出シナリオの下での陸生脊椎動物(約3万3600種)の極端な高温現象への曝露をマッピングした。Muraliたちは、高排出シナリオ(4.4℃の気温上昇)の下では、これらの陸生脊椎動物種の41%が、全世界に分布する生息地の少なくとも半分で、3つの指標(頻度、継続期間、強度)のすべてで極端な高温現象を経験し、この比率が、中~高排出シナリオ(3.6℃の気温上昇)では28.8%、低排出シナリオ(1.8℃の気温上昇)では6.1%になると予測している。極端な高温現象にさらされるリスクが最も高いのが両生類と爬虫類で、高排出シナリオの下で極端な高温現象を経験すると予測されるのは両生類の55.5%、爬虫類の51.0%であるのに対し、鳥類は25.8%、哺乳類は31.1%となった。
Muraliたちは、温室効果ガスの排出量を抑制すれば、極端な高温が生物多様性に及ぼす影響を大幅に減らすことができると主張している。
doi:10.1038/s41586-022-05606-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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