技術:人工知能との協力による共感的支援の強化
Nature Machine Intelligence
2023年1月24日
メンタルヘルス障害を抱えて支援を求める人々とオンラインで対話するピアサポーターを補助する人工知能(AI)ベースのチャットインターフェース「HAILEY」について報告する論文が、Nature Machine Intelligenceに掲載される。研究に参加したピアサポーターたちは、このインターフェースを使用すると会話の共感性が全体に高まり、支援を行うことに自信を持てたことが報告されている。
メンタルヘルスは国際保健に深刻な影響を与えており、全世界で4億人以上がメンタルヘルス障害を持っている。治療やカウンセリングへのアクセスは限られているが、非臨床環境のピアツーピア・プラットフォームでも、ある程度の支援を提供することができる。こうした支援は健康上の利益をもたらし、メンタルヘルス症状の改善と強い相関がある。
著者のTim Althoffたちは以前、共感的な文章を書けるように特別に訓練した言語モデルを開発しており、今回は、この言語モデルを用いるチャットインターフェース「HAILEY」を設計した。彼らは、ピアツーピア・プラットフォーム「TalkLife」から300人のメンタルヘルスサポーターを募集した。比較対照試験の参加者は2つのグループに分けられ、危害に関連したコンテンツを回避するためにフィルターをかけた実際の投稿に対して返事を書くよう指示された。一方のグループの参加者は、自分が書いた返事についてHAILEYからフィードバックを受けた。HAILEYは語句の置き換えや挿入を提案し(例えば、「くよくよしないで」を「それは辛いね」と置き換える)、参加者はその提案を無視するか採用するかを選択した。著者らが以前検証したAIモデルを使って参加者の返事の共感性を評価したところ、人間とAIが協力するアプローチでは会話の共感性が20%近く上昇し、中でも、会話で支援することに困難を感じたことがあると報告していたピアサポーターの会話の共感性は40%近くも上昇したことが明らかになった。
著者たちは、今回の知見は共感的会話などの課題において人間とAIが協力できる可能性を示しているが、これらのアプリケーションの安全性を確保するためにはさらなる研究が必要だと示唆している。
doi:10.1038/s42256-022-00593-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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