動物学:賢い鳥ほど捕食を逃れる
Nature Ecology & Evolution
2023年1月24日
幼鳥期に認知課題の成績が優れていたキジは、成鳥になって構築する行動圏が広く、キツネによる捕食の回避に長けていたことを報告する論文が、今週Nature Ecology & Evolutionに掲載される。
動物は、環境中を動き回る中で、生息地の好都合な部分と不都合な部分の両方(たとえば、資源地帯と捕食者)に精通するようになる。行動圏の構築では、そうした生息地の特徴を記憶する能力が重要になると考えられるが、記憶と行動圏との関係が直接的に調べられたことはほとんどない。
Robert Heathcoteたちは、126羽のコウライキジの幼鳥を飼育し、動物の認知に関する3つの標準的な検査を用いて、その短期記憶と長期記憶を評価した。キジに与えられたのは、特定の色を餌と結び付ける課題と、2種類の迷路を踏破する課題だった。10週齢になると、キジは疎林、草原、農地の混交した英国内の半自然環境に放たれた。キジの動きは無線タグで追跡され、キジの行動圏マップが作製された。そこから、記憶検査が好成績のキジほど構築した行動圏が広く、キツネによる捕食の評価で生存率が高くなっていることが明らかになった。被食事象はキジが行動圏の周縁部にいたときに多く起こっていたことが指摘され、キジがそうした場所では利用可能な避難場所に不案内だった可能性が示唆された。
今回の知見は、認知能力と野生下の空間利用との重要な関連を示している。生存率を適応度の重要な一側面として評価することにより、自然選択が記憶に優れたキジを利することも示唆された。
doi:10.1038/s41559-022-01950-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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