教育:年間学習量の3割以上がCOVID-19パンデミックによって失われている
Nature Human Behaviour
2023年1月31日
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)下において学齢期の子どもたちの学習の進捗に遅れが生じ、学校における年間学習量の約35%に相当する知識やスキルが失われたことが明らかになった。Nature Human Behaviourに掲載されたこの結果は、15の中・高所得国における42の研究のメタ解析に基づくものであり、学習の遅れは、少なくとも2年半にわたって続いており、読解よりも数学において、また恵まれない環境にある子どもでより大きいことを示している。
COVID-19パンデミック中に世界の児童の推定95%が学校閉鎖による影響を受けた。過去の研究では、学習の進行の遅れは、ハイブリッド授業、ならびに生徒や教師の不在による可能性があることが示唆されていた。対面授業の制限による影響は、学校外の学習環境によって、また不透明な経済状況に関連する精神的または身体的な健康問題によって悪化した可能性もある(後者は特に、低い社会経済的背景の家庭の児童において顕著な可能性がある)。
Bastian Betthäuserたちは今回、パンデミック下における学習障害(すなわち、期待される学習進捗の遅れ、ならびに獲得済みのスキルや知識の喪失)について、またそうした喪失が、異なる生徒集団間で変わるかどうかについて調べた。研究グループは、2020年3月~2022年8月に15か国(オーストラリア、ベルギー、ブラジル、コロンビア、デンマーク、ドイツ、イタリア、メキシコ、オランダ、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国)の42の研究からエビデンスを検討した。その結果、パンデミック中に学習の進捗が遅れ、また学習の障害が少なくとも2022年の半ばまで続いたことが判明した。そして喪失の程度は、学校で1年間に学ぶべき内容の約35%に相当する可能性があると考えられた。学習障害は、読解よりも数学で高く、その理由はおそらく、数学における学習の進行が、読解の場合よりも形式的な授業に大きく依存するためであると考えられた。また、低い社会経済的背景の児童と高い社会経済的背景の児童の間に見られる学習成果における既存の不平等は、この期間に悪化したことも明らかとなった。
著者たちは、学習の障害がパンデミック初期に現れ、また時間の経過とともに実質的に小さくも大きくもなっていないと指摘している。そして得られた結果は、学習障害を回復させるために、またパンデミック中に最も大きく学習が遅れた児童に追加的な支援を提供するために政策主導の取り組みが必要であることを示していると結論付けている。著者たちは、低所得国における学習障害に関するエビデンスは得られなかったとしており、それは今後の研究において優先的に調べられるべきであると述べている。
doi:10.1038/s41562-022-01506-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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