進化学:哺乳類の中で集団生活種の寿命が最も長いかもしれない
Nature Communications
2023年2月1日
哺乳類のうち、集団で生活する種は、単独で生活する種と比べて、概して長生きすることを明らかにした論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、約1000種の哺乳類(キンシコウ、ハダカデバネズミ、ホッキョククジラ、キクガシラコウモリなど)の分析に基づいており、哺乳類種の社会組織と寿命の進化に関する理解を深める可能性がある。
哺乳類の社会組織は多岐にわたり、単独生活、つがい生活、さまざまな形態の集団生活が観察されている。また、哺乳類の最長寿命は、トガリネズミの約2年からホッキョククジラの200年以上まで100倍の開きがある。これまでに個別の哺乳類種を対象とした研究(例えばチャクマヒヒの研究)が行われ、社会との絆が強い個体は、弱い個体よりも長生きであることが判明している。集団生活は、捕食されるリスクと飢餓のリスクを低く抑えられることが分かっており、このことで哺乳類の寿命を延ばすことができる。ただし、異なる哺乳類種を分析した研究の数は少なく、哺乳類の進化を理解する上で重要な哺乳類の社会性と寿命の間の進化的関係の根底にある分子機構は明らかになっていない。
今回、Xuming Zhou、Ming Liたちは、974種の哺乳類を分析し、社会組織の3つのカテゴリー(単独生活、つがい生活、集団生活)と寿命を比較した。これらの哺乳類には、アジアゾウやアフリカゾウ、ワオキツネザル、ヤマシマウマ、キクガシラコウモリなどの集団生活種とジュゴン、ツチブタ、トウブシマリスなどの単独生活種が含まれている。この分析の結果、集団生活種は概して単独生活種よりも長生きすることが判明し、社会組織と寿命の相関進化が裏付けられた。例えば、単独生活種のブラリナトガリネズミと集団生活種のキクガシラコウモリは、同じような体重だが、ブラリナトガリネズミの最長寿命が約2年であるのに対して、キクガシラコウモリの最長寿命は約30年だ。また、94種の哺乳類について、遺伝的解析の一種であるトランスクリプトーム解析が行われ、社会組織と寿命の両方に広範に関連する31個の遺伝子とホルモン、免疫関連経路が同定された。
今回の研究で得られた知見は、集団生活と寿命の背後にある機構についてのさらなる実験と追跡調査の基盤となる。
doi:10.1038/s41467-023-35869-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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