スポーツ:オリンピック開催国になればメダル獲得数が増えることを示す証拠は希薄
Scientific Reports
2023年2月3日
社会経済的要因を制御して分析した結果、オリンピックの開催国になればメダル獲得数が増えるという傾向がほとんど認められなかったと報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。この知見は、いわゆる「開催国効果」(オリンピック開催国のメダル獲得数が増える)に異論を唱えるものだが、著者たちは、この知見の妥当性を確かめるには、もっと多くの過去のオリンピック大会を対象とした大規模な研究が必要だと注意を促している。
オリンピックを招致する国々は、自国民に対して開催申請の妥当性を示すため、オリンピック開催によってメダル獲得数が増えるという意見を援用することが多い。過去の研究で、夏季オリンピック大会の開催国になるとメダル獲得数が1.8%上乗せされるという主張が示されているが、この増加効果は、競技種目によって差がある。
今回、Gergely CsurillaとImre Fertőは、1996年から2021年までに夏季オリンピック大会を開催した国々(米国、オーストラリア、ギリシャ、中国、英国、ブラジル、日本)に関して、開催国だった大会とそうでない大会でのメダル獲得数のデータを比較して、オリンピック大会を開催することで、どの程度メダル獲得数が増加するかを調べた。今回の研究では、各国のメダル獲得数の総数と男女別のメダル獲得数の分析が行われた。
著者たちは、1人当たりGDPや人口サイズなどの社会経済的要因を制御すると、ほとんどの国について開催国効果が消失したと報告している。メダル獲得数の総数が有意に多かったのはオーストラリア(2000年開催国)と英国(2012年開催国)だけだった。また、男子選手のメダル獲得数では英国とブラジル(2016年開催国)が有意に多く、女子選手のメダル獲得数ではオーストラリアが有意に多かった。
著者たちは、オリンピック招致国は、開催国になればメダル獲得数が増えると期待することに慎重であるべきだと著者は考えている。
doi:10.1038/s41598-022-27259-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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