持続可能性:休耕によってアブラヤシプランテーションの生物多様性が高まる
Nature Sustainability
2023年2月7日
モデル化研究によって、アブラヤシプランテーションの原生林をところどころそのままにしておくと、生物多様性が高まるとともに、そうした土地利用に伴う環境への悪影響の一部が低減される可能性があることが示された。このことについて報告する論文が、Nature Sustainabilityに掲載される。ボルネオ島のアブラヤシプランテーションに基づいた今回の知見は、元の土地の約15%を保存し、85%を耕作すれば、こうした地域の生態学的利益が最も効果的に高まることを示唆している。
アブラヤシは、世界で最も速く拡大している作物で、その大半が東南アジアで育てられ、多くの場合熱帯林がアブラヤシに置き換わっている。アブラヤシの栽培は、2050年までに倍増すると予想され、それに伴って森林が伐採されるので、全世界の絶滅が危惧されている哺乳類の54%、鳥類の64%に影響を及ぼすと予測されている。ヤシ油は、地表の一部を使うだけで他の油料作物より効率よく生産できるため、アブラヤシプランテーションにおける生物多様性や生態系機能を保全する持続可能な解決策を見つけることが重要である。
今回J Bicknellたちは、ボルネオ島のアブラヤシプランテーションの休耕地(耕作されずに残っている土地)を最適化し、作物生産と、生物多様性、栄養循環、地上炭素貯蔵を含む生態学的利益の両方を最大化する方法をモデル化した。著者たちは、全てのプランテーションが同じサイズと勾配の休耕を導入する一様な配置と、サイズと勾配の配置がプランテーションで異なる可変配置を比較した。その結果、全ての休耕地配置で生態環境が改善された一方で、全プランテーションの休耕地が河川に沿って集中する可変配置によって、局地的な生物多様性と生態系に最も高い利益がもたらされることが見いだされた。最も効率が良いのは、耕作地が85%で可変休耕地が15%の休耕地配置であると思われる。この可変配置の方法によって、耕作地を制限しない一様配置の方法と比べて、有益な生態学的結果が最大で2倍になる可能性がある。
著者たちは、今回の解析が現在と将来のプランテーションの計画と管理の指針となる可能性があると結論付け、土地の保全に的を絞った戦略を組み込めば、生態学的な悪影響の一部を低減するのに役立つ可能性があると示唆している。
doi:10.1038/s41893-022-01049-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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