環境:過去3世紀間に世界の広範囲に及んだ湿地の喪失
Nature
2023年2月9日
1700年から2020年までに世界の自然湿地の約20%が失われたことを報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この知見は、湿地の喪失がより広範な環境に与える影響を評価するための基礎となる可能性がある。
湿地は、重要な生態系サービスをもたらしているが、水抜きされて、都市化や農業開発のために用途転換されることが多い。世界規模で湿地の喪失を適切にマッピングすることは困難だった。これまでの研究で、1900年以降に湿地の少なくとも50%が失われたと示唆されたが、1700年以降の湿地の純喪失の試算には、28%から87%までのばらつきが見られる。このように数値が大きくばらついているために、湿地の用途転換が環境に及ぼす影響を評価することが困難になっている。
今回、Etienne Fluet-Chouinardたちは、154カ国における湿地の水抜きと土地転換に関する全球スケールの記録と地域スケールの記録(計3320件)と既存の土地利用データと湿地の規模に関するシミュレーションのデータを併用して、人間の介入を原因とする湿地喪失の時期と空間分布を再構築した。今回の研究では、1700年以降、340万平方キロメートルの内陸湿地が失われ、世界の湿地の純喪失が21%だったと推定された。この推定は、既存の湿地喪失の地域別推定値によって裏付けられている。湿地喪失の原因として最も多かったのは、畑作物の耕作のための水抜き、水田への転換と都市開発だった。湿地の用途転換を推進した要因は、地域によって異なっており、Fluet-Chouinardたちは、湿地喪失がヨーロッパ、米国と中国に集中している点を指摘している。
Fluet-Chouinardたちは、今回の研究は、環境の変化を全球規模で記録したものであり、人間の活動が環境の変化にどのように影響しているかを監視するための重要な情報資源になるかもしれないと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-022-05572-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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