獣医学:仔犬の餌に非加工食品を使うと成犬期の胃腸障害リスクが低下する
Scientific Reports
2023年2月10日
幼少期や青年期の飼い犬に未加工の肉、生の骨や人間の食事の残飯を含んだ食餌を与えると、成犬になった時に特定の胃腸障害に対する防御力が備わる可能性のあることを示唆した論文が、Scientific Reportsに掲載される。一方、炭水化物が使用された加工度の高い小粒のドッグフードや通常のローハイドガムを与えるという食餌は、胃腸障害のリスクが高いことと関連していた。これらの知見は、飼い犬の腸の健康にとって重要な意味を持つかもしれない。
今回、Kristiina Vuoriたちは、2009年にヘルシンキ大学で策定されたDogRisk食物摂取頻度質問票によって得られたデータを用いて、犬の幼少期の食餌と成犬になってからの慢性腸症(CE)の罹患(飼い主の回答に基づく)との関連を調べた。慢性腸症とは、長期間継続する胃腸疾患のことで、下痢、嘔吐、体重減少を特徴とする。飼い主は、飼い犬の幼少期(生後2カ月から6カ月)と青年期(生後6カ月から18カ月)にどのくらいの頻度でどのような種類の食品を餌として与えたのかを回答した。次に、これらの食餌について、その飼い犬が成犬になってからの慢性腸症の発症の有無との関連付けが行われた。今回の研究におけるサンプルは、幼少期の犬の食餌(4681例)と青年期の犬の食餌(3926例)によって構成され、そのうち幼少期1016例(21.7%)と青年期699例(17.8%)において、成犬になってから慢性腸症の症状が見られたと飼い主が回答した。
Vuoriたちは、加工されていない肉(生の赤身肉、臓器、魚、卵、骨など)、野菜やベリー類を使用した食餌や人間の食事の残飯や食卓の皿に残った食べ物のくず(調理されたジャガイモや魚類など)を幼少期あるいは青年期に与えられた犬は、加工度の高い小粒のドッグフードを与えられた犬と比べて、成犬になってから慢性腸症の症状が見られる確率が有意に低いことを明らかにした。幼少期に非加工食品や人間の食事の残飯を餌として与えられた犬は、慢性腸症のリスクがそれぞれ22.3%と22.7%低くなったが、加工度の高い食餌を与えられた犬の慢性腸症のリスクは28.7%高くなった。青年期に非加工食品や人間の食事の残飯を餌として与えられた犬は、慢性腸症のリスクがそれぞれ12.7%と24%低くなったが、加工度の高い食餌を与えられた犬の慢性腸症のリスクは14.6%高くなった。
食品別では、仔犬に生の骨や軟骨を1週間に数回の頻度で与える場合は慢性腸症のリスクが33.2%低くなり、ベリー類を1年間に数回与えると慢性腸症のリスクが28.7%低くなったとVuoriたちは報告している。これに対して、ローハイドガム(生皮を加工して、化学処理した製品)を毎日与えられた仔犬は、慢性腸症のリスクが117.2%高くなった。
Vuoriたちは、こうした知見は、幼少期や青年期の犬にさまざまな非加工食品や自然のままの食品を与えることで、成犬になってから慢性腸症に罹患するリスクを低減できる可能性を示唆していると考えている。ただし、以上の結果の正しさを確かめるためには、犬の生涯にわたる食餌の評価など、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/s41598-023-27866-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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