農業:実在の植物種子を模倣した種子運搬具による自然の改善
Nature
2023年2月16日
オランダフウロの種子は、地面に落下するとドリルのように回転して地中に潜り込もうとする。ここから着想した新しい生分解性種子運搬具の設計を記述した論文が、Natureに掲載される。この種子運搬具は、オランダフウロの種子よりも播種成功率が高い。この技術は、荒廃した地域の農業ストレスと環境ストレスに対処するための空中播種の有効性を高める可能性がある。
空中播種は、大面積の地域や立ち入ることの難しい地区で播種を行うための重要な方法であり、火災後の森林再生や荒地の復興を促進できる。しかし、種子が地表に落下した状態では、気象条件によって傷んだり、野生動物に食べられたりして発芽率が低下する。さまざまな草種の種子は自己埋没することができるが、この能力を他の種類の植物種子に応用できれば有益だと考えられる。
今回、Lining Yaoたちは、オランダフウロの種子を模倣した木製の生分解性種子運搬具を設計した。オランダフウロは、植物属の1つで、その種子は、コイル状になった尾状物を巻き戻すことでドリルとして作用し、地中に潜り込む。Yaoたちが設計した種子運搬具には、コイル状の尾状物が3つ付いており、これを湿らせると巻き戻り、アメリカシロゴヨウの種子(長さ約11ミリメートル、重さ約72ミリグラム)と同じ大きさの種子を運搬できる。コイル状の尾状物の数を増やすと、地面に対するドリルビットの角度が改善され、穴を掘りやすくなる。この種子運搬具は、平坦な土地(最も播種の難しい地形)で、80%の成功率で種子を地中に埋め込み、種子が風に飛ばされたり、動物に食べられたりするリスクを低下させた。同じ地形条件下で、天然のオランダフウロの種子を使った実験が行われたが、成功率は0%だった。Yaoたちは、この種子運搬具は、肥料の散布やその他の機器(センサーなど)の搭載にも利用できるかもしれないので、農業や自然環境の保全に有益かもしれないと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-022-05656-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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