エネルギー:エネルギー危機による家計費の増加のモデル化
Nature Energy
2023年2月17日
モデル化研究によると、ロシアがウクライナに侵攻して以降のエネルギー価格の変化によって、全世界の家庭が使うエネルギーの総費用が62.6%から112.9%増えた可能性がある。このことについて報告する論文が、Nature Energyに掲載される。
ロシアのウクライナ侵攻は、2022年に全世界のエネルギー価格の劇的な上昇をもたらし、COVID-19のパンデミック(世界的大流行)後の経済回復による需要の増大に起因してすでに起こっている物価の上昇を悪化させた。家庭が使う暖房、冷房、移動にかかるエネルギーの費用だけなく、グローバルサプライチェーン全体で他の物品やサービスの費用が増えていた。その結果、多くの政府が、支援パッケージを導入して家庭や企業を支援した。この危機が続くにつれて、エネルギー価格の影響の分布の解明は、より的を絞った支援を行うのに重要になっている。
今回K HubacekとY Shanたちは、世界人口の87.4%をカバーする116カ国の201の支出グループ(さまざまな消費水準の集団を50パーセンタイルで表している)に対する、エネルギー価格の上昇の直接的影響と間接的影響をモデル化した。さらに、石炭と石炭製品、原油と石油製品、天然ガスについて、2022年2月から9月のさまざまな期間の平均価格に基づいてエネルギー価格シナリオを構築した。これと多地域投入産出法を組み合わせて、こうした価格の変化が家庭のエネルギー費にどのような影響を及ぼしたかが見積もられた。著者たちは、家庭が使うエネルギーの総費用が、62.6~112.9%増加したと示唆している。これは、家計支出の2.7~4.8%の増加に寄与している。また、こうした増加の結果として、世界中でさらに7800万から1億4100万人の人々が極端な貧困に追い込まれる可能性があると見積もっている。
著者たちは、的を絞ったエネルギー支援が脆弱な家庭の助けになる可能性があると示唆するとともに、食料などの必需品の費用の増加に起因する支援の必要性を強調している。また、生計費の危機に取り組む短期的な政策は、気候安定化目標などの持続的な開発の長期的なコミットメントに沿っていなければならいと力説している。著者たちは、安価なエネルギーの入手における不平等に取り組むには、多国間の活動が必要であると結論付けている。
doi:10.1038/s41560-023-01209-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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