ワクチン:ワクチンに用いるサメ由来の化合物の代替品創出
npj Vaccines
2023年2月17日
スクアレンの半合成類似体(20種以上)が合成されたことを報告する論文が、npj Vaccinesに掲載される。スクアレンは、以前よりサメの肝油から抽出されてきた化合物で、特定のワクチンの免疫応答を増強するために用いられている。この研究成果により、スクアレンの代替品を持続的に調達できる可能性が生まれている。
サメに由来するスクアレンは、インフルエンザワクチンやCOVID-19ワクチンのワクチンアジュバント製剤(一部のワクチンの有効性や効力を高めるために使用される物質)に使用されており、現在臨床評価が実施されている結核やマラリアなどの疾患に対するワクチン候補の重要な成分でもある。しかし、サメの個体群は乱獲にさらされており、全世界の外洋性のサメとエイの個体数は1970年以降71%減少しており、スクアレンの供給に問題が生じる可能性がある。
今回、Christopher Foxたちは、酵母を使って製造したβ-ファルネセンを用いて、20種以上のスクアレン類似体を合成し、そのワクチンアジュバント成分としての活性をサメ由来のスクアレンと比較して評価した。Foxたちが合成したスクアレン類似体の一部(アルコールA、ファルネセン熱二量体、ジオールB、エーテル4、エーテル5など)は、サメ由来のスクアレンと同等あるいはそれより優れたアジュバント活性特性を有することが明らかになった。Foxたちは、これらの半合成類似体の一部は、スクアレンの有望な代替品になるかもしれないと述べているが、ワクチン製品への利用を進めるには、さらなる試験が必要だと考えられる。
doi:10.1038/s41541-023-00608-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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