量子コンピューティング:量子コンピューターの誤り訂正の改善
Nature
2023年2月23日
誤り訂正のサイズを大きくすると誤り率が低下するという量子コンピューティングの実証について報告する論文が、今週、Natureに掲載される。今回の研究は、量子コンピューターの誤り率を十分に低く抑えて、有用な量子アルゴリズムを実行できるようにするためのスケーラブルな量子誤り訂正の開発に向けて一歩前進したことを示している。
量子コンピューターは、古典的なコンピューターと同様に、基盤となる物理系に由来する「ノイズ」(あるいは混乱)を原因とした誤りが生じやすい。量子コンピューターの持つ可能性を十分に引き出すためには誤り率を低減する必要がある。量子誤り訂正の1つの方法は、誤り訂正符号を使用することで、誤り訂正符号は、複数の物理量子ビット(量子情報の単位で、古典的コンピューターのビットに相当する)を用いて論理量子ビットを形成する。この系(表面符号で符号化された論理量子ビット)は、誤りを検出して修正しつつ、情報に悪影響を及ぼさないが、このような系をスケールアップすることは、より多くの量子ビットを操作することを意味し、より多くの論理誤りが発生する可能性がある。符号のサイズを大きくするとともに論理性能を向上させるには、新たに増える論理誤りに対応できる全体的な誤り修正にする必要がある。
今回、Google Quantum AIのHartmut Nevenたちは、表面符号で符号化された論理量子ビットを用いると、系のサイズが大きくなるにつれて誤り率を低減できることを実証した。今回の研究では、72量子ビットの超伝導量子プロセッサーが作製され、2種類の表面符号を使って検証された。第1の表面符号は、サイズの大きい距離5論理量子ビット(49個の物理量子ビットで構成される)で、第2の表面符号は、サイズの小さい距離3論理量子ビット(17個の物理量子ビットで構成される)だった。その結果、サイズの大きな表面符号の方が、小さな表面符号よりも論理量子ビットの性能が高いことが判明した(1サイクル当たり論理量子ビット誤り率が2.914% 対 3.028%)。Nevenたちは、有効な演算に必要な論理量子ビット誤り率に達するためには、さらなる研究が必要なことを指摘しているが、今回の研究は、今後の開発の基本要件を明らかにしている。
doi:10.1038/s41586-022-05434-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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