天文学:JW宇宙望遠鏡観測結果の早期発表をもとにした非常に遠方の大質量銀河の発見
Nature
2023年2月23日
ビッグバンから約5~7億年後に形成された大質量銀河候補の観測結果が、今週、Natureで発表される。これらの銀河候補の質量は、こうした初期宇宙の銀河に予測されていた質量より大きい。今回の観測結果は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測データの第1報に含まれており、宇宙初期の銀河形成に関する知見をもたらしている。
赤方偏移が約6(ビッグバンから約10億年後)の位置で大質量銀河が同定され、その恒星質量が、最大で太陽の1000億倍に達することが明らかになっているが、それ以前の時代の大質量銀河を見つけることは難しかった。赤方偏移は、天体の年齢の尺度である。遠方の天体が発した光の波長は、宇宙の膨張によって、スペクトルの赤色端に偏移するため、画像上の天体の色が赤色に近づくほど、さらに遠方に位置する天体であることが分かる。
今回、Ivo Labbéたちは、JWSTによって観測された高赤方偏移(z = 6.5からz = 9.1まで)の銀河候補を選び出して、宇宙誕生直後の約7億5000万年間に形成された大質量銀河を探索した。その結果、赤方偏移がz = 7.5からz = 9.1までの位置に6つの大質量銀河候補が同定され、その恒星質量が太陽質量の100億倍を超えることが判明した。そのうちの1つの銀河は、恒星質量が太陽質量の約1000億倍である可能性がある。
観測された銀河の質量は、これまでの予測を上回っている。以上の知見は、その妥当性の確認が分光学的になされれば、宇宙史初期のこれまでの予測より早い段階で大質量銀河が成長していたことを示唆する証拠となる。
doi:10.1038/s41586-023-05786-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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