気候:米国におけるハリケーンの連続襲来リスクが気候変動によって高まる可能性
Nature Climate Change
2023年2月28日
15日以内に2つの熱帯低気圧が米国の大西洋沿岸やメキシコ湾岸の同じ地域に襲来する可能性が、気候変動によって高まるかもしれないことが気候モデルを用いた研究で明らかになった。この研究について報告する論文が、Nature Climate Changeに掲載される。
熱帯低気圧は、沿岸地域の最も破壊的な自然ハザードの1つであり、強風、豪雨、高潮による被害をもたらす。こうした暴風雨の特徴に対する気候変動の影響の中身は複雑だ。これまでの研究は、単一の暴風雨に対する気候変動の影響に注目したものが大部分で、複合事象(短期間に2つの熱帯低気圧が同じ地域に襲来する事象)のリスクは十分に解明されていない。複合事象の場合には、建造物やインフラが追加的被害に対して脆弱になり、被災者が命を失うリスクにもさらされるため、特に被害が大きくなることがある。
今回Ning Linたちは、気候モデルを用いて、米国の大西洋沿岸とメキシコ湾岸に2つの熱帯低気圧が(15日以内に)連続して襲来する頻度が、異なる温室効果ガス排出シナリオによってどのように変動するのかを評価した。現在、沿岸地域でのハリケーンの連続襲来は、場所にもよるが、10~92年に一度となっている。今回の研究では、中排出シナリオ(CO2排出量が2050年以降に減少し始めるが、2100年までに実質ゼロは達成されない)で、この平均頻度が1~3年に一度まで下がり、可能性が低いと一般に考えられている高排出シナリオ(2050年にCO2排出量が倍増する)では今世紀末に1~2年に一度となることが判明した。この変化は、熱帯低気圧の上陸頻度の増加だけでなく、海面水位の上昇や暴風雨の強度の上昇にもつながっている。
Linたちは、熱帯低気圧の頻度と強度に対する気候温暖化の影響には不確実な点があることを指摘しつつが、今回の研究で得られた知見は、沿岸地域の回復力戦略とインフラ計画を策定する際に、21世紀中の熱帯低気圧の連続襲来によるリスクが増加していることを考慮に入れる必要があることを示していると結論付けている。
doi:10.1038/s41558-023-01595-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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