健康:2020年のロックダウン期間に早産件数はわずかに減少した
Nature Human Behaviour
2023年2月28日
2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウンの最初の3カ月間に、18の高所得国および高中所得国において早産件数の3~4%の減少が見られたことをメタ解析によって明らかにした論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。ただし、この研究は早産減少の原因を調べたものではなく、さらなる研究が必要である。
37週前で生まれる早産は、世界中で年間推定1480万件が生じており、早産に関連する合併症は乳児死亡の主な原因となっている。ロックダウン中の早産減少について調べた過去の研究では、ソーシャルディスタンシングによる感染リスクの低下、大気汚染の緩和、高リスク妊娠には適切な医療が施されていない可能性があること(従って多くの死産につながる)といった原因が、早産件数減少の背後にあると示唆されていた。しかし、それらのエビデンスには一貫性がなかった。
Meghan Azadたちは、2015年1月~2020年7月のカナダ、米国、ブラジル、フィンランド、オーストラリア、英国を含む18カ国の5100万件の出産に関する人口ベースのデータを、26カ国のデータを含む、より広域のメタ解析の一環として収集した。Azadたちは、ロックダウンが実施されなかったと仮定して、予測される周産期転帰を月ごとに推定するモデルを構築し、時間的傾向および季節変化を各国について算出した。その結果、対象国における早産が、モデルの予測と比較して、ロックダウンの最初の2カ月間に4%、またロックダウンの3カ月間に3%減少していたことがわかった。研究グループは、約5万件の早産がロックダウンの最初の1カ月間に回避されていた可能性があるとしている。また、ロックダウンの4カ月目になると変化はみられず、この傾向は極早産(32週までの出産)についても同様であったと述べている。死産率に関するメタ解析では、高所得国における死産率の変化についてのエビデンスは得られなかった。
Azadたちは、今回の知見は、ロックダウンの最初の数週間における早産件数の減少の原因を説明するわけではないと述べており、またCOVID-19感染が早産に及ぼす影響についても説明していない。そして著者たちは、ロックダウンが早産に及ぼす影響を解明するためには、今回見られた傾向の背後にある経路に関してさらなる研究が必要であると結論付けている。
doi:10.1038/s41562-023-01522-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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