環境:21世紀に植物プランクトンの大増殖が深刻化していることを示す世界地図
Nature
2023年3月2日
沿岸域における植物プランクトンの大増殖(植物プランクトンブルーム)に関して、2003年から2020年までに規模の拡大と頻度の上昇があったことを報告する論文が、Natureに掲載される。今回の研究では、ブルームのパターンを全球スケールで示したマップが作成された。このマップは、ブルームを評価する際の貴重な情報リソースとなり、環境政策を決定する際に役立つ情報となるかもしれない。
植物プランクトンブルームとは、微細藻類が集積した状態で、海洋生態系と淡水生態系の両方の表層で発生する。人間の活動を原因とした水中の栄養レベルの変化が全世界のブルームの発生頻度を上昇させると予想されている。ブルームは、他の生物にとっての食物と栄養素になることもあるが、食物網に蓄積するおそれのある毒素の産生や、以前はバランスのとれていた生態系において酸素濃度が極めて低い「デッドゾーン(死の海域)」の出現につながる酸素欠乏などの悪影響にも関連している。これまでの研究では、サンプリングに一貫性がなかったり、ブルームが発生する生態系が多様であったりといった理由からブルームの傾向の特徴を十分に解明できずにいた。
今回、Lian Fengたちは、2003年から2020年までの間にNASAの人工衛星「アクア」がとらえた画像(76万件)を評価して、21世紀のブルームの分布と傾向を示す包括的なマップを作成した。2020年にブルームの影響を受けた海域は、合計3147万平方キロメートル(世界の海洋面積の8.6%)で、2003年比で397万平方キロメートル(13.2%)の増加となった。また、全世界のブルームの発生頻度の中央値は、2003年から2020年までに59.2%上昇した。さらに、海面水温と海洋循環の変化とブルームの平均発生頻度との間に有意な相関関係が認められ、一部の海域では、海面水温の上昇とブルームの発生が同時に発生していた。
沿岸海域における植物プランクトンブルームの規模と頻度に関する詳細な情報は、研究者がブルームの発生過程と消滅過程を理解するうえで役立つ。こうした情報は、ブルームのリスクと効用を評価する際に利用でき、有害なブルームの発生や影響を最小限に抑える戦略の策定に役立つかもしれないとFengたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-023-05760-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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