環境科学:アフリカの乾燥地樹木の炭素蓄積量の推定
Nature
2023年3月2日
サハラ以南のアフリカの半乾燥地域に生育する樹木(約100億本)の調査結果をもとにして、この生態系の炭素蓄積量の詳細な推定値が得られたことを報告する論文が、Natureに掲載される。このデータは、30万点以上の衛星画像から集められたものであり、炭素循環の理解を深めるために役立ち、科学者、政策立案者、乾燥地の回復に取り組む人々、農民にとっての有用な情報リソースとなる可能性がある。
樹木は、その生態系に対して、さまざまな効用をもたらす。例えば、動物の避難場所となり、動物に食料をもたらし、経済に貢献し、炭素循環や気候システムにおいて重要な役割を果たしている。こうした役割は、乾燥地生態系において特に重要だ。乾燥地樹木に関する詳細なデータは、気候変動の緩和、カーボンアカウンティング(炭素会計)、生態系の保護と回復などの取り組みにとって重要だが、そうしたデータが不足している。
今回の研究で、Compton Tuckerたちは、この記録上の空白に取り組み、サハラ以南、赤道以北のアフリカの半乾燥地帯の約1000万km2の土地に生息する99億本以上の樹木の評価結果を明らかにした。機械学習を用いた手法で高解像度衛星画像(32万6523点)の精査が行われ、樹木が個別に識別されて、マッピングされた。その結果、個々の樹木の葉、材、根に蓄積されている炭素の量を推定できるようになった。炭素蓄積量の推定値は、超乾燥地域(年間降水量0~150ミリメートル)、乾燥地域(年間降水量150~300ミリメートル)、半乾燥地域(年間降水量300~600ミリメートル)、乾燥半湿潤地域(年間降水量600~1000ミリメートル)という降水量による地域区分に従って分類された。1本の樹木の平均炭素貯蔵量は、超乾燥地域で51キログラム炭素、乾燥地域で63キログラム炭素、半乾燥地域で72キログラム炭素、半湿潤地域で98キログラム炭素となった。過去に別のモデルを使って同じ対象地域の樹木の炭素蓄積量を推定する研究が数多く発表されているが、そのほとんどが今回の結果より過大な推定値になっていた。
doi:10.1038/s41586-022-05653-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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