気候:熱帯林での森林伐採は降水量の減少を引き起こす可能性がある
Nature
2023年3月2日
森林伐採が進んだ地域では降水量が減少しているという傾向が熱帯全体で見られることが、このほど実施された分析研究で明らかになった。今回の研究結果は、2100年のコンゴの森林伐採率の予測値を前提とした場合に同国内の降水量が8~10%減少するかもしれないことも示している。この研究について報告する論文が、Natureに掲載される。
熱帯林は、エネルギー、水、炭素循環に影響を与えるため、気候の調節に重要な役割を果たしている。また、局地的な降水パターンや地域的な降水パターンにも影響を与えている。例えば、蒸発散は、地域降雨の強力な駆動要因であり、アマゾン盆地の平均降水量の41%、コンゴの平均降水量の約50%を占めている。森林伐採がどのような役割を果たすのか、降水量にどのような影響を及ぼすのかといった疑問については、一定数のプロセスがさまざまなスケールで発生しているため、確かな答えが得られていない。アマゾン盆地では、小規模な森林伐採と降水量の増加との関連が明らかになっているが、インドネシアでは、森林伐採が降水量の減少とエルニーニョ現象による影響の深刻化と関連付けられている。
今回、Callum Smithたちは、降水量に関して森林減少がどのような役割を果たすのかという点を調べるため、アマゾン盆地、コンゴ盆地と東南アジアにおける2003年から2017年までの森林被覆の変化に関する人工衛星データセットを解析し、森林減少地域を特定した。Smithたちは、このデータと18種類の降水量データセットを合わせて検討した。その結果、森林伐採の規模が大きくなるにつれて、森林伐採が降水量に及ぼす影響が大きくなることが判明した。つまり、森林減少を原因とする降水量の大幅な減少は、森林減少の空間規模が50キロメートルを超えると発生し、200キロメートルで最大の降水量減少が観測されたのだ。森林減少を原因とする降水量の絶対変化量は、雨季に最大となった。Smithたちは、2100年のコンゴの森林伐採率の予測値を前提とした場合に同国内の降水量が8~10%減少するかもしれないという見解を示している。
Smithたちは、熱帯林を保全して、気候の回復力を支援する必要のあることが、今回の知見によって示されていると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-022-05690-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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