気候変動:2070年代の英国では極端な降雨事象がかなり頻繁に発生するという予測
Nature Communications
2023年3月8日
新しい気候モデルのシミュレーションが行われ、高排出シナリオの下で、英国内での極端な局地的降雨の発生頻度が、現在のレベルの最大4倍に達する可能性のあることが明らかになった。この研究知見は、土地管理、インフラ設計や洪水対策への投資に関する政策決定の裏付けとして役立つかもしれない。今回の研究を報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。
最近、ヨーロッパ各地での洪水が発生したことを受けて、今後数十年の間に地球温暖化によって局地的な降雨がどのように変化するのかについて理解を深める必要性が再確認されている。2021年7月に中央ヨーロッパで発生した洪水は、200人以上の死者とインフラへの多大な被害をもたらし、ドイツだけでも推定被害額は45億~55億ユーロ(約6300億~7700億円)に上った。空気の温度が上昇すると、より多くの水分が空気中に保持されるようになるため、地球温暖化に伴って極端な降雨事象が激化すると一般に予想されている。しかし、降雨は非常に局所的な現象であり、数多くの要因の影響を受け、気候の変動性によって支配される。そのため、将来的に地球温暖化が局地的な降雨事象にどのような影響を与えるのかは分かっていない。
今回、Elizabeth Kendonたちは、新しい気候モデルのシミュレーションを実施して、英国内の局地的な時間雨量の極端値(20 mm/h超)を調べた。その結果、高排出シナリオ(2100年に気温上昇が約4.3℃に達するという予測に基づく)の下では、2070年代の極端な降雨事象の発生頻度が4倍になるという予測が示された。以前の低解像度モデルでは、2~3倍と予測されていた。ただし、この頻度上昇の予測は、気候の変動性の影響を受けるため、記録的な降雨事象が群発的に発生し、その後の複数年にわたって発生しないというランダムな発生の仕方をする可能性がある。Kendonたちは、このように極端な降雨事象に群発傾向が見られることは、適応するために努力を重ねる地域社会にとっての課題であり、計画と管理を行う際に考慮に入れることが大事だと考えている。
doi:10.1038/s41467-023-36499-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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