気候:山火事がオゾン層を破壊する仕組み
Nature
2023年3月9日
山火事の煙の組成が、成層圏オゾンの破壊に寄与する化学反応を促進することを示唆した論文が、Natureに掲載される。この研究知見は、気候の温暖化に伴って山火事の頻度と規模が大きくなると、オゾン層の回復が遅れるかもしれないという懸念を高めるものと言える。
2019~2020年に発生したオーストラリアの山火事では、煙が大気中に高く舞い上がり、世界中に運ばれた。この煙は、高層大気の化学組成の変化(例えば、成層圏のオゾン量の減少)と関連していた。しかし、山火事の煙がオゾンの枯渇に寄与する仕組みは依然として明らかになっていない。
今回、Susan Solomonたちは、山火事の煙に含まれる化学物質の混合体が、オゾンを破壊する分子である塩素ラジカルの活性化を促進するという考えを提案している。そして、Solomonたちは、この仮説を検証するために、オーストラリアの山火事の際に観測されたオゾン枯渇を再現するシミュレーションと大気観測の結果を比較した。今回の研究で得られた知見は、山火事によって生じるエアロゾルの化学的性状がオゾン枯渇に寄与する可能性があることを示している。
Solomonたちは、今回の研究で調べることのできなかった他の反応も重要である可能性があり、成層圏に生じるさまざまなエアロゾルの影響をさらに調べることを推奨している。この点は、同時掲載のV. Faye McNeillとJoel ThorntonのNews & Viewsでも言及され、彼らは「Solomonたちの研究結果は、低温で乾燥した高層大気中に存在する、ありふれてはいるが複雑な大気粒子種(例えばバイオマスの燃焼によって発生する粒子)の特性と反応性について、大気化学の研究者が解明を進める必要性を強調している」と述べている。
doi:10.1038/s41586-022-05683-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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