社会科学:ラマダン中の断食は司法判断の寛大さと関連する
Nature Human Behaviour
2023年3月14日
インドおよびパキスタンにおいて、ラマダン中の断食は判事による刑事裁判の判決に見られる寛大さと関連していることが、37万件の判決および8500人の判事の観察データから明らかになった。このことについて報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。
意思決定、特に司法判断における意思決定に、さまざまな要因がどれほど影響を及ぼしているかを理解することに研究者たちは大きな関心を持っている。例えば以前の研究では、空腹が、厳しい判決を下す判事と関連することが見いだされており、この現象は、「空腹判事効果(hungry judges effect)」とも呼ばれる。
Sultan Mehmoodたちは、半世紀にわたる日次データを使って、ラマダン中の断食がパキスタンおよびインドの判事による犯罪量刑の判断に影響を及ぼすかどうかを、調べた。このデータセットは、インドの37万2000件以上の判例、パキスタンにおける5800件以上の判例からなっており、これらはそれぞれ7600人以上と900人以上の判事によって下されたものである。
研究チームは、判事および判例の無作為な割り付け、ならびに断食強度のばらつきを用いて、断食強度(1日における断食の持続時間)と判決との関連を調べた。その結果、ラマダンを遵守する判事は、ラマダン中の断食強度が増すと無罪判決を言い渡す可能性が高くなること、またそうした無罪判決は、不服が申立てられて上級裁判所で逆転判決が下される確率が5%低い可能性があることが判明した。具体的には、断食時間が(ベースラインに対して)1時間増えるごとに、ラマダン中の無罪判決数が10%増えること、また不服申立てが3%減ることが明らかとなった。
doi:10.1038/s41562-023-01547-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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