食料安全保障:最大30日先までの食料不安を予測できる新しいツール
Scientific Reports
2023年3月17日
食料を十分に入手できない状態(食料不安)にある人々が国内に占める割合を最大30日先まで予測できる新しいツールを示したElisa Omodeiたちの論文が、Scientific Reportsに掲載される。Omodeiたちは、このツールが食料不安のリスクに直面する国々の政策決定者を支援し、より迅速な対応を促進するために役立つかもしれないという考えを示している。
今回、Omodeiたちは、最近深刻な食料不安を経験したブルキナファソ、カメルーン、マリ、ナイジェリア、シリア、イエメンの2018~2022年の食料消費データを用いてこのツールを開発し、紛争関連死者数、食料価格、極端な気象事象とイスラム暦の断食月「ラマダン」(この月に上記6カ国のかなりの地域で食料消費パターンが変化する)に関するデータを用いて、このツールを強化した。そして、Omodeiたちは、このツールを用いて、2021年10月から2022年2月までに食料を十分に入手できないリスクに直面した世帯の占める割合を推定した。
Omodeiたちは、このツールを用いて、イエメンとシリアで食料不安に直面した世帯の占める割合を予測できることを明らかにし、予測精度が、1日後の予測で99%となり、30日後の予測で72%(イエメンの場合)と47%(シリアの場合)となった。これに対して、シリアやイエメンよりも利用可能な食料消費データが少ない残りの4カ国の場合、このツールの予測精度が、それほど高くないことが判明した。このことは、長期間にわたって一定の間隔で収集された広範な地域に関する食料消費データを用いると、このツールの予測精度が高くなることをはっきりと示している。
Omodeiたちは、このツールが、リアルタイムのデータを使用して迅速に予測を示すことができるため、食料不安をモデル化する既存の技術を補完できるかもしれないという見解を示したうえで、このツールの予測が、携帯電話のデータやニュースの自動テキストマイニングを組み込むことによって、さらに改善されるかもしれないと付言している。
doi:10.1038/s41598-023-29700-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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