神経科学:キンカチョウが求愛歌をさえずり始める際に脳細胞が協調する仕組み
Nature
2023年3月23日
キンカチョウが求愛歌をさえずる際に1つのシラブル(短い音)から次のシラブルに移る能力は、脳の視床領域と鳥のさえずりに関連する別の脳領域の特定のニューロンの影響によっていることを示唆した論文が、Natureに掲載される。今回の研究で得られた知見は、複雑な行動の制御における視床の役割を明らかにしている。
動物の脳の視床は、訓練された単純な運動を実行する際に中心的役割を果たすことが明らかになっている。これは、視床からの入力が、短い運動をつなぎ合わせて長い運動連鎖にするために必要であることによる。雄のキンカチョウ(Taeniopygia guttata)は、父親のさえずりをまねて、さえずりの練習をする。父親のさえずりは、2~7シラブルの連鎖であり、それぞれのシラブルは明確に異なっており、行動的に意味を持っている。しかし、これらの連鎖を生み出す運動指令の基盤となる機構は明らかになっていない。
今回、Michael Longたちは、さまざまな脳領域のニューロンが協調して、求愛歌の学習とさえずりが実行される仕組みを研究した。Longたちは、好みの雌を見つけて求愛歌を発しているキンカチョウの脳画像を調べて、脳活動のモニタリングを行った。また、Longたちは、キンカチョウの脳に埋め込んだ刺激電極を用いて、求愛歌の中の特定の瞬間に電流を流した。そして、nucleus uvaeformis(Uva)という視床内の小さな構造体を刺激する実験で、Uvaが別の脳領域(HVC)の神経細胞群と接続することが明らかになった。これらの神経細胞は、シラブルが始まる直前に非常に活発になる。
以上の知見は、より単純な運動の組み合わせから複雑な行動が生成される仕組みを理解する上で重要な意味を持っている。これと同様の仕組みがヒトの発話と呼吸を調整しているとする学説も提唱されている。
doi:10.1038/s41586-023-05818-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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