動物学:孵化直後のゼブラフィッシュに数的能力が組み込まれている可能性
Communications Biology
2023年3月24日
孵化後96時間以内のゼブラフィッシュ(Dania rerio)の幼生が、黒い線の本数の違いを識別したことを報告する論文が、Communications Biologyに掲載される。孵化直後のゼブラフィッシュに数的能力が組み込まれているという可能性が、今回の知見から示唆されている。
これまでの研究で、数的能力が、ヒト新生児や孵化直後のグッピーやニワトリヒナに備わっていることが実証されているが、これらの種は、誕生(孵化)直後の時点で、脳が高度に発達している。これに対して、幼生や胎児の状態で生まれ、脳が未発達な種の数的能力については、ほとんど解明されていなかった。
今回、Tyrone Lucon-Xiccatoたちは、孵化して間もないゼブラフィッシュの幼生が、水槽の白い壁に印刷された黒い縦線の本数の違いを識別できるかどうかを調べた。これらの幼生は、最初に壁面が黒い縦線の模様で覆われた水槽で飼育された。それから96時間後に180匹の幼生が別の水槽の中央部に移された。この水槽の2つの壁面は白地に最大4本の黒い線が印刷されていた。この実験で、幼生が黒い線の本数の多い壁面に泳いでいくのか、少ない壁面に泳いでいくのか、あるいは水槽の中央部に留まるのかを観察し、それぞれの区画に滞留していた時間を計測した。そして、120匹の幼生を用いた対照試験では、縦線の密度、表面積と縦線によって形成された全体の形状の違いを制御して同じ実験が実施された。
その結果、幼生の63.1%が、黒い線の本数の多い壁面を好み、この壁面近くでの滞留時間(56.9秒)は、本数の少ない壁面付近での滞留時間(32.0秒)の約2倍だった。壁面上の黒い線の数をそれぞれ1本と4本とした実験では、30匹の幼生の66.5%が黒い線が4本の壁面を好んだ。また、縦線の密度、表面積と全体の形状を制御した試験では、63.2%の幼生が、黒い線の多い壁面を好んだ。以上の結果からは、ゼブラフィッシュの幼生が、黒い線の本数の違いを識別することができ、黒い線の多い方を好むことが示されている。
Lucon-Xiccatoたちは、遠縁の関係にあるヒトとゼブラフィッシュの新生児と孵化直後の幼生の両方が数的能力を備えているということは、数的能力が、発達中の脊椎動物の脳に古くから組み込まれた顕著な特徴であることを示しているかもしれないという考えを示している。
doi:10.1038/s42003-023-04595-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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