健康:定期的な運動が認知機能に及ぼす好ましい影響はごくわずかかもしれない
Nature Human Behaviour
2023年3月28日
24のメタ解析のアンブレラレビューから、健常者における定期的な身体運動と認知力改善との正の相関を示す証拠はほとんどないことが明らかとなった。この結果について報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。今回の知見は、運動が健常者の認知力にプラスの効果をもたらす可能性を除外するわけではないが、そうした主張を支持する証拠は現時点では限られていることを強調するものである。
定期的な運動は身体的健康に有益な影響をもたらすだけでなく、認知および認知機能にプラスの作用を及ぼすと考えられている。こうした知見は公衆衛生対策に反映されており、一部の機関は今日、健康な認知状態を保つための手段として定期的な運動を推奨している。
Luis Ciriaたちは今回、271件の一次研究を詳述した24件のメタ解析を総括し、全1万1266人の健康な参加者を対象とした109件の研究に注目した。今回の総説の対象は、一般に因果関係の存在を確定するものとして用いられる無作為化対照臨床試験を詳細に調べた研究に限定されている。Ciriaたちは、身体運動が認知に及ぼすという当初の小規模で統計的に優位な正の影響は、潜在的な調整変数(対照群間の差や研究のベースラインの差)を考慮して、出版バイアスを補正した後に消失してしまうことを見いだした。ただし、得られた知見は、身体運動が認知機能にプラスの効果を全く及ぼさないことを示唆するものではないこと、また認知に有害に作用し得る可能性があることを示唆するものでもないことを強調している。一方でCiriaたちは、運動と認知の間に因果関係があると規定する際には注意を要すると論じている。というのも、因果関係を示す確かな証拠は現時点で存在しないからである。
Ciriaたちは、身体運動のもたらす恩恵、特に身体的な健康に関する恩恵は、それ自体が、人々が日常生活の中で定期的な運動を行うことを勧めるための、エビデンスに基づく公衆衛生政策を正当化するのに十分であると結論付けている。
doi:10.1038/s41562-023-01554-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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