公衆衛生:都市部に居住する若者の健康上の優位性が縮小している
Nature
2023年3月30日
都市部に住む小児と青年は、これまで成長と発達の点で農村部の小児と青年より優位にあるとされていたが、21世紀に入って大部分の国々で、その優位性が小さくなったという可能性を示唆した論文が、Natureに掲載される。ただし、アフリカとアジアの一部の地域に住む男子少年は、その例外で、都市部の優位性が増幅されていた。この研究知見は、世界200カ国の7100万人の若者のデータの解析に基づいたものであり、成長と発達の転帰を向上させることを目的とした政策やプログラムに対する情報提供に役立つ可能性がある。
小児期と青年期に最適な成長と発達を遂げることは、生涯にわたる健康と幸福にとって極めて重要だ。小児期と青年期の成長と発達は、家庭、地域、学校での栄養や生活環境に影響されるのだが、この年齢層の成長と発達の転帰を都市部と農村部のコミュニティの間で比較したデータは少ない。そのため、学齢期の少年少女の健全な成長と発達を増進することを目的とした多くの政策やプログラムは、視点が狭く、都市部での生活に不利益があると想定していることが多い。
今回、NCD Risk Factor Collaboration(1500人の研究者と医師からなる国際的ネットワーク)は、1990~2020年に200カ国の農村部と都市部に住んでいた5~19歳の若者7100万人の身長と体重のデータを照合した。その結果、1990年には、一部の国を除いて、都市部の小児と青年の身長が農村部の小児や青年よりも高いことが分かった。しかし、2020年の時点で、ほとんどの国で都市部居住者の身長の優位性は小さくなり、英国、米国、フランスなどの多くの西側富裕国では、都市部居住者の身長の方が低くなった。この傾向の例外は、サハラ砂漠以南のアフリカのほとんどの国々と太平洋、南アジア、中東の一部の国々の男子少年だった。これらの国々では、新たに加わった農村部の男子少年のコホートで、身長が伸びなくなり、場合によっては身長が低くなっていた。身長の割に痩せているか太りすぎているかを示すボディーマス指数の上昇は、一般に都市部の方が農村部よりやや大きかったが、南アジア、サハラ砂漠以南のアフリカ、中欧・東欧の一部の国々では、その逆になった。
小児と青年の成長と発達の軌跡を理解することで、こうした重要な年齢層における健康転帰を向上させるための活動の指針を生み出せる可能性があり、著者たちは、このことの重要性は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)とウクライナでの戦争の影響も受けた貧困の増加と食料価格の上昇を考えると特に指摘されるべきだと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-023-05772-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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