古代ゲノミクス:中世スワヒリ人の祖先には複数の系統が存在していた
Nature
2023年3月30日
中世のスワヒリ人は、アフリカ系とアジア系の祖先を持つ人々によって構成されていたことが、古代DNA研究によって明らかになった。この知見は、この地域の現在の文化の状況と対応しており、東アフリカの沿岸部では民族の混合が1000年以上にわたって続いてきたことを示唆している。今回の研究を報告する論文が、今週のNatureに掲載される。
東アフリカ沿岸部のスワヒリ文化は、アフリカ文化とアジア文化の特徴を併せ持っている。話し言葉であるスワヒリ語はアフリカ起源であるが、大部分の住民が信仰しているのはアジア由来のイスラム教だ。西暦900年の時点で、この地域にアフリカ人以外の人々が到来しており、インド洋を横断する交易ルートが確立されていたが、こうした初期の人々がどの程度混合していたのかは明らかでない。
今回、David Reichたちは、中世から近代初期までの間にスワヒリ人が居住していた6つの沿岸部の町(西暦1250年~1800年)と内陸部の町(西暦1650年以降)で収集した合計80人のDNAの配列解読を行った。これら80件のデータセットのうち、54件がさらなる解析に使用された。その結果、中世のスワヒリ人において、アフリカ系とアフリカ系以外の祖先を持つ人々が大きな割合を占め、アフリカ系以外の祖先は主にペルシャ人の男性だったのに対して、アフリカ系の祖先は主に女性で、インドからの遺伝的寄与もわずかに認められた。
今回の発見は、東アフリカでは、少なくとも1000年前に沿岸部の複数の地域でアジア人とアフリカ人が混合を始めたことを示唆している。このことは、スワヒリ海岸の人々が伝承する最古の歴史である「キルワ年代記」の内容とも一致する。こうした相互作用の状況は定かでないが、当時の東アフリカの人々は母系社会を形成していた。
doi:10.1038/s41586-023-05754-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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