環境:オゾン層を破壊する5種類のCFCsが2020年に過去最高の存在度に
Nature Geoscience
2023年4月4日
オゾン層を破壊する5種類のクロロフルオロカーボン(CFCs)の大気中存在度と放出が、2010〜2020年に急増したことを報告する論文が、Nature Geoscienceに掲載される。この研究では、この放出の増大は主として、モントリオール議定書の現在の規制の対象外の過程によるものであることが示唆されている。
CFCsは、冷媒、エアロゾル噴射剤、溶媒および発泡剤として一般に用いられてきたが、オゾン層を破壊する主要な要因であることが分かった。その生産はモントリオール議定書の下で2010年に全世界的に禁止された。しかしながらCFCsは、CFCsの代替として冷蔵や空調のために用いられるハイドロフルオロカーボン(HFCs)などの他の化学物質を生産する際の原材料(他の化合物を生成するために用いられる原料)、中間物および副産物としていまだに放出されることがある。
Luke Westernらは、世界中の14カ所の観測を用いて、現在の用途がないかほとんど知られていない5種類のCFCs(CFC-113、CFC-112a、CFC-113s、CFC-114a、CFC-115)の大気中存在度が2010〜2020年にどのように変化したかを調べた。彼らは、5種類のCFCsの大気中濃度は2010年以降増加し、2020年には過去最高の存在度に達したことを見いだした。これらのCFCsは、古い家庭用設備や建築発泡剤中にほとんど存在しないと考えられるが、著者らはCFC-113a、CFC-114a、CFC-115は他の化学物質の生産に関係することが知られていると指摘している。CFC-112aとCFC-113は現在の用途は知られておらず、これらの化学物質の増加の原因は分からないと著者らは述べている。彼らは、5種類のCFCsを統合した2020年の放出は、2番目に存在量が多いクロロフルオロカーボンであるCFC-11の4200トンに匹敵すると見積もった。温暖化効果としては、著者らはこれは4700万トンのCO2に相当し、2018年のロンドンのCO2排出量の150%に等しいと指摘している。
著者らは、2010〜2020年に放出されたこれらの5種類のCFCsの蓄積がオゾン層に及ぼす影響は小さいと示唆している。しかしながら、現在の割合で継続して増加すると、モントリオール議定書の下でなされた進歩と相殺し、付加的な気候への影響を及ぼす可能性がある。
doi:10.1038/s41561-023-01147-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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